車谷長吉の『赤目四十八瀧心中未遂』である。 口当たりのよいものばかりが好まれる時代だが、本作は時代におもねることのない、なんともパンキッシュな小説だ。 我が家の朝食は、いつもNHKラジオの朝の番組が流れているのだが、その中でパーソナリティの高橋源一郎が昔、車谷長吉の人生相談が面白いと紹介していたのが気になり、どんな小説...
小説の記事一覧
ジェフリー・ディーヴァーの『限界点』である。 翻訳は土屋晃。 原題は『EDGE(エッジ)』。 “EDGE”を辞書で引くと「〔競技などで〕小差[僅差]で勝つ、接戦をものにする」という意味も載っている。 そうした意味ではタイトル通りの内容である。 アメリカには証人保護プログラムという制度がある。 重大事件の関係者や犯罪の司...
沢木耕太郎の『波の音が消えるまで』である。 なんというか、じつに男に都合のよい小説である。 という訳で、男の自分としては、ある種のヒリヒリするような憧れをもって読み終えた。 作者の沢木耕太郎は、自分が学生の頃、ライターを目指そうとしていた人たちにとってカリスマだった。 自分の周りにも、そうした先輩がいたが酒を飲みながら...
高橋義夫の『さむらい道』である。『さむらい道』と書いて「さむらいみち」と読ませる。本作は戦国時代から江戸時代初期まで、主に山形県の村山地方を治めた(後に庄内など日本海側も領地となる)出羽山形藩の初代藩主、最上義光の生涯を描いた歴史小説である...
恩田陸の『蜜蜂と遠雷』である。 結構なヴォリュームの作品だがぐいぐいと一気に読んでしまった。 こんなに、作品に引き込まれて読んでしまったのは久しぶりである。 場面への導き方が抜群に上手い。 こんなに上手いと著者自身の手のひらで踊らされている感がして自己嫌悪に陥る、そこがいやになる。 物語は吉ケ江国際ピアノコンクールとい...
垣根涼介の『月は怒らない』である。著者の作品は何冊か読んでいるが、いずれもエネルギッシュでパワフルなミステリーというイメージがある。しかし、本作はそうした男っぽいイメージとは一線を画する。本書の紹介に垣根ワールドの新境地といった...
佐藤正午の『月の満ち欠け』である。2017年の第157回直木賞受賞作。昨年、読んだ著者の『鳩の撃退法』という小説が妙に印象に残っていたところに、本作で直木賞を受賞したとのニュース。...
遠田潤子の『雪の鉄樹』です。 帯の「本の雑誌が選ぶ2016年度文庫ベストテン第1位」という惹句にそそられて七日町の八文字屋で昨年の30日に購入。 全体に主人公の心情を描き込み過ぎてる感があって、もう一...