上橋菜穂子の『鹿の王 水底の橋』である。 前作の『鹿の王』は先月、読んだばかりだった。 そうしたこともあり、続編の本作がこの4月に出たことを知り「読みたいなぁ」と…。 そんな風に思っていたところ、いつも行く図書館で偶然、目に入ったので速攻で借りる。 本作では前作で主人公を演じた戦士のヴァンは登場しない。 主人公は前作で...
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中島京子の『夢見る帝国図書館』である。 本読みといわれる種族にとっては、なんとも愛おしい小説だ。 中心に据えられているのは東京の上野に日本で最初に造られた国立図書館である帝国図書館。 昔は通称「上野図書館」と呼ばれていたが、現在は「国立国会図書館国際子ども図書館」と名前を変え児童書専門の図書館になっている。 物語は主人...
上橋菜穂子の『鹿の王』である。 読みごたえもあるし、面白かった。 読んで、間違いのない作家たちがいる。 いってみれば「読めば、必ず面白い」ことが分かっている作家たちである。 自分にとっては上橋菜穂子は間違いなく「読めば、必ず面白い」作家たちの一人である。 彼女の作品はややもすると児童向けの作品だと思われ、敬遠してしまう...
吉田修一の『太陽は動かない』です。 吉田修一といえば、『パークライフ』や『横道世之介』、『悪人』といった人物模写に重点を置いた柔らかな作風の作家というイメージで、こうしたビジネス小説とも読めるミステリーといったジャンルに踏み込むとは思いもよりませんでした。 本書の帯にはスパイ大作戦とあるが、まさに映画「ミッションインポ...
城山三郎の『落日燃ゆ』です。 発行されたのは1974年。 太平洋戦争終結後、軍人以外の文官で唯一、A級戦犯として死刑となった政治家、広田弘毅の生涯を描いた伝記小説。 実を言えば、この小説を読むまで広田弘毅(ひろたこうき)の名前を意識したことはありませんでした。 全体に、冷静な文章で淡々と描かれた小説です。 広田弘毅は明...
柚月裕子の『盤上の向日葵(ひまわり)』です。 昨今の将棋ブームを予言するかのように描かれた将棋をモチーフとしたミステリー。 読みごたえがありました。 平成6年の夏、白骨化した遺体が埼玉の大宮市郊外の小高い山中から発見される。 遺体の側からは初代菊水月という駒師が作ったとされる将棋駒の名品が見つかる。 なぜ遺体の傍らに最...
奥田英朗の『向田理髪店』です。 久しぶりに読む奥田英朗の作品。 彼の小説は読めば面白いのは、わかっている。 はずれることは、あまりない。 本作も、そうした期待を裏切ることない連作短編集だった。 雰囲気的には『家日和』や『我が家のヒミツ』あたりと同じ流れを汲む作品ともいえる。 まぁ、奥田作品の中では佳作といったところでし...
原尞(りょう)の『それまでの明日』である。 14年ぶりの新刊だという。 書店で本書を見たときには「おやおや、原尞が新刊を出したんだ!」と。 懐かしいと同時に、あの文体がまた読めるのかと、つい衝動買いしてしまった。 自宅に帰り、さっそく読み始めたが…。 最初の数ページを読み「おいおい、今どきスマホどころか携帯電話すら持た...
藤沢周平の『よろずや平四郎活人剣』です。 十数年前に読んで以来、本作を読むのは二度目。 ずーっと、また読みたいなぁと思っていた。 連作の短編集で結構、長い作品だが今回も面白く読むことができた。 娯楽時代劇という言葉がこれほどピッタリな小説はないのではなかろうか。 まず、詩情がありユーモアがある。 そしてラブストーリーも...
万城目学の『悟浄出立』である。 久しぶりに読む万城目学の小説。 『鴨川ホルモー』や『偉大なる、しゅららぼん』といった長編の摩訶不思議な面白青春小説は読んだことはあるが、そうした系統でない、しかも短編の小説は初めて読んだ。 なんか、作者の底力を見せられた感じ。 当初は短編集だとは思わず最初の「悟浄出立」の一篇を読み終え、...