小説奥田英朗 『向田理髪店』奥田英朗 奥田英朗の『向田理髪店』です。 久しぶりに読む奥田英朗の作品。 彼の小説は読めば面白いのは、わかっている。 はずれることは、あまりない。 本作も、そうした期待を裏切ることない連作短編集だった。 雰囲気的には『家日和』や『我が家のヒミツ』あたりと同じ流れを汲む作品ともいえる。 まぁ、奥田作品の中では佳作といったところでし... 2019年3月4日 十六夜亭
ミステリー 『それまでの明日』原尞(りょう) 原尞(りょう)の『それまでの明日』である。 14年ぶりの新刊だという。 書店で本書を見たときには「おやおや、原尞が新刊を出したんだ!」と。 懐かしいと同時に、あの文体がまた読めるのかと、つい衝動買いしてしまった。 自宅に帰り、さっそく読み始めたが…。 最初の数ページを読み「おいおい、今どきスマホどころか携帯電話すら持た... 2019年2月11日 十六夜亭
歴史・時代小説藤沢周平 『よろずや平四郎活人剣』藤沢周平 藤沢周平の『よろずや平四郎活人剣』です。 十数年前に読んで以来、本作を読むのは二度目。 ずーっと、また読みたいなぁと思っていた。 連作の短編集で結構、長い作品だが今回も面白く読むことができた。 娯楽時代劇という言葉がこれほどピッタリな小説はないのではなかろうか。 まず、詩情がありユーモアがある。 そしてラブストーリーも... 2019年1月14日 十六夜亭
歴史・時代小説万城目学 『悟浄出立』万城目学 万城目学の『悟浄出立』である。 久しぶりに読む万城目学の小説。 『鴨川ホルモー』や『偉大なる、しゅららぼん』といった長編の摩訶不思議な面白青春小説は読んだことはあるが、そうした系統でない、しかも短編の小説は初めて読んだ。 なんか、作者の底力を見せられた感じ。 当初は短編集だとは思わず最初の「悟浄出立」の一篇を読み終え、... 2018年10月20日 十六夜亭
小説 『羊と鋼の森』宮下奈都 宮下奈都の『羊と鋼の森』である。 なるほど、タイトルの『羊と鋼の森』とは、ずばりピアノのことだったのですね。 ピアノという楽器は、本書でも説明されている通り、鍵盤を押すとボディーの中に張られた鋼鉄製の弦(ピアノ線)をハンマーが叩いて音を出すという構造になっている。 つまりは羊はハンマーに張られたフェルト。 鋼は、ハンマ... 2018年9月23日 十六夜亭
小説 『赤目四十八瀧心中未遂』車谷長吉 車谷長吉の『赤目四十八瀧心中未遂』である。 口当たりのよいものばかりが好まれる時代だが、本作は時代におもねることのない、なんともパンキッシュな小説だ。 我が家の朝食は、いつもNHKラジオの朝の番組が流れているのだが、その中でパーソナリティの高橋源一郎が昔、車谷長吉の人生相談が面白いと紹介していたのが気になり、どんな小説... 2018年8月28日 十六夜亭
ミステリー 『限界点』ジェフリー・ディーヴァー ジェフリー・ディーヴァーの『限界点』である。 翻訳は土屋晃。 原題は『EDGE(エッジ)』。 “EDGE”を辞書で引くと「〔競技などで〕小差[僅差]で勝つ、接戦をものにする」という意味も載っている。 そうした意味ではタイトル通りの内容である。 アメリカには証人保護プログラムという制度がある。 重大事件の関係者や犯罪の司... 2018年8月13日 十六夜亭
小説 『波の音が消えるまで』沢木耕太郎 沢木耕太郎の『波の音が消えるまで』である。 なんというか、じつに男に都合のよい小説である。 という訳で、男の自分としては、ある種のヒリヒリするような憧れをもって読み終えた。 作者の沢木耕太郎は、自分が学生の頃、ライターを目指そうとしていた人たちにとってカリスマだった。 自分の周りにも、そうした先輩がいたが酒を飲みながら... 2018年7月29日 十六夜亭
ミステリー黒川博行 『疫病神』黒川博行 黒川博行の『疫病神』である。 『疫病神』シリーズの第一作。 最近の『疫病神』シリーズを知っている身からすれば、主人公の二宮とやくざの桑原との丁々発止のやり取りが少なく、やや物足りない。 しかし、これは第一作ということもあり、仕方のないところ。 これだけを読んで、本作以降のシリーズを読まないのはもったいない。 疫病神po... 2018年7月1日 十六夜亭
ミステリー 『慈雨』柚月裕子 柚月裕子の『慈雨』を読む。 しばらく、積読になっていたので早く読まないとなぁと思いながらも、読んだのは今日に、なってしまった。 舞台は群馬県。 森村誠一の『人間の証明』や横山秀夫『64(ロクヨン)』(D県警と謳っているが)もそうだったが、群馬県はよくミステリーの舞台になるねぇ。 主人公は群馬県警を定年退職した元刑事の神... 2018年6月24日 十六夜亭
小説 『大岩壁』笹本稜平 笹本稜平の『大岩壁』である。 著者、お得意の山岳小説。 骨太の山岳小説といっていい。 それなりに読みごたえはあるし、面白いことは間違いない。 ただ、なんとなく素直に、いい山岳小説だといえない気分がある。 舞台となるのはパキスタンにある、標高8,125メートルのナンガ・パルバット。 ウルドゥー語で「裸の山」を意味する山の... 2018年6月3日 十六夜亭
歴史・時代小説 『侍』遠藤周作 遠藤周作の『侍』である。 野間文芸賞受賞作。 何とも、鬱々とした小説である。 先日、マーチン・スコセッシが監督した『沈黙』という遠藤周作が原作の映画を観た。 禁教令が敷かれた当時のキリシタンや宣教師の過酷な人生を描いたもので、奉行を演じたイッセー尾形がいい味を出していた。 そんなこともあり「そういえば、遠藤周作のちゃん... 2018年6月2日 十六夜亭
歴史・時代小説 『遺訓』佐藤賢一 佐藤賢一の『遺訓』である。 著者によって2010年に書かれた『新微組』という幕末の庄内藩を描いた小説の続編ともいえる作品。 タイトルを見れば、いやでも『南洲翁遺訓』という、明治時代に元庄内藩士が西郷隆盛の言葉や教えをまとめた書物が思い浮かぶ。 なぜ、戊辰戦争では幕府側であり敗者だった庄内藩の侍たちが、敵の領袖である西郷... 2018年5月20日 十六夜亭