真藤順丈(しんどう じゅんじょう)の『宝島』です。
2018年に山田風太郎賞、2019年に第160回直木三十五賞を受賞しました。
書き出しから飛ばしてるなぁという風で、すごく、エネルギッシュ。
熱量の高い小説です。
文章も饒舌で濃密。
直木賞を受賞しているのでエンターテイメントなのかもしれませんが純文学ともいえるような作品です。
舞台は1950年初頭から本土復帰までの沖縄。
戦果アギヤーといわれる米軍基地の物資を盗み、それを横流して生活する戦争孤児の若者四人組。
グループのリーダのオンちゃん、その親友のグスク、レイはオンちゃんの弟、そしてヤマコはオンちゃんの恋人。
オンちゃんは義賊のように盗んだ米軍の物資を貧しい人たちに分け与えコザ(現在の沖縄市)の英雄と慕われていた。
1952年の夏、極東最大といわれる嘉手納基地にオンちゃん一味たちは侵入するが、その襲撃でオンちゃんは行方不明になってしまう。
レイ、グスクの二人は沖縄の刑務所に服役。
出所後、二人はヤマコとともにオンちゃんの行方を追うが、手掛かりはなかなかつかめない。
そして、いつしかレイはやくざ、グスクは刑事、ヤマコは教師といった具合に別々の道を歩み始める。
三人がオンちゃんを探そうする一方で、沖縄は米軍が起こす事件や大きな事故に苦しみながらも、本土復帰へ向けて大きく動いていく…。
史実である沖縄の歴史にオンちゃんの行方を追う三人の若者の生き様をかぶせたような小説。
幼女が米兵によってレイプされ殺害された由美子ちゃん事件、軍用機が小学校に墜落した宮森小学校米軍機墜落事故、レッドハット作戦といわれる米軍の毒ガス搬出作業、アメリカの抑圧が積もり積もって起こったコザ暴動といった大きな事件に翻弄される三人。
このあたり、情報量が多く盛り込みすぎといった感じを受けたが、史実なので実際、盛り込みすぎのような激動の時代だったのだろう。
そして瀬長亀次郎、又吉世喜、喜舎場朝信、キャラウエイ高等弁務官など、実在した人物も作中には登場する。
まだ、彼らを知る人物が多く存命中ということもあるせいか、そうした個性的な人物たちが上手に生かされていないように思った。
自分にとっては文章が饒舌すぎた。
文章自体が沖縄的とでもいうのだろうか?
おせっかいで口うるさい沖縄のおばちゃん(失礼)のようで、隙間がない。
そのせいか、ストーリーがスゥっと頭に入る風ではなく読んでいて少々、疲れる。
とはいえ、本作を読んで戦後の沖縄がアメリカや日本から抑圧された末にようやく本土に復帰したという歴史を噛みしめ、思いを巡らすのは意味のあることだと思う。
翻って、現在の沖縄はどうなのだろうか?
「ヤマトンチュー」といわれる本土の人々から抑圧されている状況は未だ、変わっていないようだ。