『「グレート・ギャツビー」を追え』ジョン・グリシャム
ジョン・グリシャム『「グレート・ギャツビー」を追え』
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ジョン・グリシャムの『「グレート・ギャツビー」を追え』です。
翻訳は、村上春樹。
ジョン・グリシャムといえば司法の場を舞台とするリーガルサスペンスを数多くヒットさせたベストセラー作家。
村上春樹とグリシャムの組み合わせは、正直、意外でした。
村上氏がこういう、エンターテイメント作品を翻訳するイメージがなかったもので…。
思ったのは、夏のプールサイドで冷たい飲み物なんか飲みながら読むには、ちょうどよい小説ですね。
まぁ、面白いです。

あらすじはといえば、こんな感じです。
アメリカのニュージャージー州にあるプリンストン大学の図書館から、スコット・フィッツ・ジェラルドの原稿が盗まれた。
盗んだのは美術品窃盗犯や元陸軍レンジャー部隊隊員、CIAで訓練を受けたハッカーといった6名のプロフェッショナル。
FBIに追い詰められた、彼らは盗んだ原稿をなんとしても金に替えなければならない。
一方、カミノアイランド(架空の町)というフロリダの海辺の町で「ベイ・ブックス」という書店を営むブルース・ケーブル。
ブルースには趣味と実益を兼ねて稀覯本の収集家という一面があった。
そんな、ブルースの近所に引っ越してきた、売れない女流作家のマーサー・マン。
マーサーは盗まれた原稿にブルースが関わっていると睨んだ調査会社からある依頼を受けていた…。

本書のみどころは、やはりマーサーとブルースのやりとりでしょう。
女たらしのブルースに対するマーサーの女心。
マーサーが浜辺を散歩するシーンなど、エドワード・ホッパーの浜辺の絵が浮かびます。
また、本書を読むと、アメリカの作家たちの生活の一端がみえてくる。
このあたり、なかなか、スタイリッシュで映画になってもよいような作品です。

ベストセラー作家の自筆原稿に絡む事件といえば、本書を翻訳した村上春樹氏の自筆原稿横流し事件? が思い起こされます。
既に亡くなって久しいですが、○○○という中央公論社の元名物編集者が村上春樹氏の自筆原稿を古書店に横流ししていたことが発覚し、大きな問題になったことがありました。
中には村上氏が翻訳したスコット・フィッツ・ジェラルドの生原稿もあったようです。
本書が中央公論新社から発刊というのもちょっとした因縁のようなものを感じます。

ジョン・グリシャムの初期の作品は、昔、何冊か読みましたがどの作品を読んでもはずれのない印象があります。
『法律事務所』や『ペリカン文書』、『依頼人』、etcといった作品は映画化にもなり、映画自体もよいできでした。
30年ぐらい前には日本でもいくつかの作品がベストセラーになり、ちょっとしたグリシャム・ブームのようなものがあったことを記憶しています。
ところで、カバーの村上春樹とジョン・グリシャムのフォントの大きさが気になります。
(普通は翻訳者より作者の方が大きいんじゃないかな…)
ついでながら、後記で訳者も書いていたが、タイトルがちょっと残念。

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