およそ十日ほど前に、この本が日本会議という団体から出版停止を求められたというニュースがネット上で話題になった。
なんでも本の内容に事実誤認があるとのことだ。
以来、どんな本なんだろうと、よく行くいくつかの本屋さんの新書コーナーをチェックしていたのだが見かけることはなかった。
これはもう、読むことはかなわないかなと思っていた矢先、一週間ほど前だが、一軒の時々利用する本屋さんの新刊コーナーでこの本を見つけ即購入。
どんな内容だろうと興味津々で読んでみた。
日本会議の名前は、時々、新聞広告等で見た記憶があるし参加している人たちの名前を拝見すると保守というよりは右翼の論客や文化人が多いなぁとは見ていたが、これほど宗教色の強い団体だとは知らなかった。
著者によると日本会議という団体は、もともと生長の家という新興宗教のから派生した、一派(著者の言う一群の人々)により作られた団体だとある。
もともと生長の家は谷口雅春という創立者が昭和四年に雑誌『生長の家』を刊行することに始まる。
元来が生長の家は明治憲法復元や日の丸擁護といった過激な天皇信仰ともいうべき運動を強く推し進めたが、雅春の孫であり現総裁である雅宣が太平洋戦争を侵略戦争と認めた頃から宗旨替えともいえる方向転換をこなう。
この結果、原理主義的な一群の人々は生長の家との関係を断ち、日本会議といった独自の路線を歩み始める。
著者が「一群の人々」と呼ぶ日本会議に連なる60年代の学生運動の亡霊みたいなものが現在の安倍政権の中枢に食い込んで首相を支えていることにも驚く。
物事というのは世間の人々が知らないうちに深く静かに進んでいくのだね…。
そうした、意味での気味の悪さや戦慄を覚えた。
この本を発行した出版社は扶桑社。
扶桑社と言えば保守・右派的な立場のフジサンケイグループの出版社である。
ここから、こうした右傾化する社会に水を差すような本が出版されたことに驚く。
保守や右派にも、こうした宗教色の強い団体が政権と連携することに危惧する人たちがいるのだと複雑な感想を抱かせる。
日本会議については、今後、いろいろと注目されるだろうし、これからも注視していこうと思う次第である。