東山彰良『流』
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東山彰良の『流(りゅう)』である。
第153回直木三十五賞受賞作。

直木賞受賞作ではあるが、純文学としての要素も十分ある。
まず、文章がよい。
荒っぽいことも描いているが、文章がよいから下品になっていない。
リズムもあるしユーモアもあるし、何より詩情がある。

1975年から1985年にかけての台湾で生きる少年の青春小説といってもいいような、彼を取り巻く一家の物語である。
思えば中国に比べ台湾の歴史や政治というのは、自分自身、あまりよくわかっていないなぁ。
毎日、お世話になっているというより、これがなければリアルに生活できないパソコンや電化製品のパーツなんて多くが台湾製なのにねぇ…。
真珠湾攻撃の際に符丁として使われた「ニイタカヤマノボレ(新高山登れ)」のニイタカヤマも台湾の山だし、当時は日本一高い山だった。
そんな風に日本とはずいぶんと因縁が深い国(と言って、いいのだろうか?)にもかかわらず、最近の日本の政治家は大陸に遠慮して見て見ぬふりのような感じでの外交である。
まぁ、大人の事情というのはわかるのだが…。

台湾の歴史は日清戦争で日本が勝った結果、清から日本に割譲され日本統治時代が始まる。
そして第二次世界大戦末期に、中国の蒋介石率いる国民党が毛沢東の指導する共産党の反撃を受け台湾へ逃げ政府を作った。
その時に中国本土から移住した人たちは外省人と言われる。
彼等は、後に元々台湾で生活し日本国籍を有していた本省人を長期にわたり弾圧することになる。
台湾は少なくとも1990年代初頭までは、現在のような民主化された国ではなかった。
現在、台湾の人口の約12パーセントが外省人と言われる。

物語の舞台は1975年の台湾から始まる。
蒋介石が亡くなった1975年に主人公の祖父が自分の経営する布屋で殺害される。
この事件は終盤で決着をみるのだが、そこに至る各章はこの事件とはあまり関係のない主人公の青春譚といってよい内容で構成されている。
そのあたりは、じれったい感じもあるが台湾の文化や人々の物事への考え方、そして主人公の生き様が詰まっている。
また、中国系の人々が血縁を大事にするというのは知っているが、これを読むと日本に比べ人間関係がえらく濃いことがリアルに伝わる。

この小説とは関係がないが、司馬遼太郎が中国や韓国など血縁を大事する儒教文化では贈収賄がなくならないと書いていた。
彼らにしてみれば親兄弟や親戚からの頼みを断ることは道徳、倫理に反することなのだというメンタリティーを押えておくと、この小説への理解がより深まるだろう。

台湾のこと自体あまり意識したこともなかったが、この時代のリアルな台湾という国の雰囲気や息遣いを知るには、とてもよい小説だとおもう。
まぁ、普通に考えれば当たり前の話なのだが中国と違って当時は台湾でもビーチボーイズとか聞けたしアメ車に乗る若者もいたのだね!

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