奥田英朗『家日和』
奥田英朗『家日和』
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奥田英朗の『家日和』である。
6編を収めた短編集で第20回柴田錬三郎賞を受賞した。
作品全体を覆うのは、フフフというような軽妙なユーモアである。
そして、ちょっと、ホロっとする。

著者の作品には、伊良部という精神科医が登場する『イン・ザ・プール』や『空中ブランコ』という短編集があるのだが、むかし図書館でクックッと笑い声を押し殺しながら周りを気にしつつ読み終えた覚えがある。
今挙げた二作のような毒はないが、今を生きる三十から四十代の少し疲れた男女、夫婦という家という空間の中での異性であるがゆえのずれや、そのありようを生き生きとユーモアたっぷりに描いた作品が揃っている。
いずれの作品にも共通するのは登場人物の趣味や思い入れを通じて現代を象徴的にそして皮肉たっぷりに切り取っていることである。
この作家、こうしたリアルな、いまどきのユーモア小説を描かせたらピカイチである。
決して大げさな仕掛けや大きな事件も起こらないのだけれど、落としどころがわかってるというか現代人の機微がよく描かれているためクスッと笑えたり、少しほろっときたり共感を覚える部分が多い。

文章も癖のない読みやすい自然なものでスラスラと読み進むことができる。
個人的には「家においでよ」という作品が好きである。
主人公と同じような趣味のために「そうそう」、「あるある」という感じで自分を投影してしまいながら彼の境遇をうらやましく思ってしまうのだ。
最後の「妻と玄米御飯」は作者本人の家庭を髣髴させるようで秀逸。

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