佐々木譲の『警察庁から来た男』です。
この小説、まぎれもないハードボイルドです。
無駄のないツボを押さえた上質の作品です。
舞台は北海道警。
ある日、タイ人少女の売春事件を発端として警察庁から特別監察が入る。
派遣されたのはキャリアといわれる若いエリート警官。
一方、札幌のすすき野では暴力バーのあるビルから男が落ちるという事故が発生する。
各々の事件を調査していた警官たちがたどった先にあったものは北海道警と暴力団との癒着だった…。
多くの警察を舞台にした物語はキャリアといわれるエリート警察官がいやみで鼻に付くような人物として描かれ、現場の捜査員と軋轢を生んでいくというパターンが多いが、この小説はそうした安直な方向に流れずにキャリアと現場の捜査官がしっかりとした矜持を持つ人物として描かれている。
警察小説で大切なのはリアリティでだが登場人物も破天荒なタイプではなく押さえの効いた警官たちばかりで、こうした警官なら本当にいるかもと思わせる。
またデテールがしかっりしてるため札幌のすすき野など、街の匂いが伝わってくるような感じもあり、ちょっとした旅情に浸ることもできる。
前作の『笑う警官』も読んでみたくなった。
傑作です。