『死都日本』石黒耀
石黒耀『死都日本』
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石黒耀の『死都日本』です。
第26回メフィスト賞、第15回宮沢賢治賞(奨励賞)、受賞作。
いやはや、傑作です。
物語にスピード感もあり、最後までスリリング。
一気読み、間違いありません!
この本を読むまで南九州の霧島連山や鹿児島湾などの地形が大規模な噴火によって形成され、過去に何度も破局的噴火があった地域とは知りませんでした。
破局的噴火とは日本が全滅するほど被害が大きいハルマゲドン的な噴火ということです。

本作は南九州の霧島が破局的噴火という霧島連山が吹き飛び最大径16キロ、深さ平均500メートルの巨大なカルデラが出現するような大噴火が起こったという状況を迫力満点にシミュレートしたクライシスノベルです。
その仕掛けは南九州の霧島が噴火するところから、世界レベルの経済問題まで発展していきます。
終盤の日本の通貨「円」を安定させるために政府がとった政策や人工衛星を利用した計画など物事がさほど単純に進むとは思えないところもありますが…。

なにせ土地感がないものでgooglマップと首っ引きで読みましたが霧島連山が噴火し消滅するというのは、ものすごいスケールです。
この作品は2002年に発刊されたもので、当時火山学者達からとても高い評価を得ました。
火山噴火に対する防災についても問題を提起し当時「死都日本シンポジウム」という討論会まで開催されたということです。

作者は大阪で勤務医として働いている人物で火山学者など、そうしたことを専門に勉強してきた人でないことにもビックリです。
本作は作者のデビュー作という点でも驚きです。
よく、こうした専門的なことを勉強する時間があったものです。
様々な専門用語もたくさんでてきますが丁寧に説明されているので難解なこともなく、軽いタッチの文章のせいもありすらすらと読めます。
また、日本書紀や天孫降臨神話と火山噴火を絡めた解釈などもアクセントになっています。
この本を読むと、ちょっと近所の火山についても調べてみようかという気になること請け合いです。

※死都日本シンポジウムのホームページ


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