佐藤正午『月の満ち欠け』
佐藤正午『月の満ち欠け』
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佐藤正午の『月の満ち欠け』である。
2017年の第157回直木賞受賞作。
昨年、読んだ著者の『鳩の撃退法』という小説が妙に印象に残っていたところに、本作で直木賞を受賞したとのニュース。
というわけで、そのうち読んでみようとずっと思っていた。

読んでる途中は、そんな風には思わなかったが読み終えてみれば立派な恋愛小説である。
普通に読めば怖い物語のはずなのに、美しい小説だと思った。

何とも思わせぶりで構成の巧みなところは『鳩の撃退法』の延長線上にあるような感じ。
『鳩の撃退法』もトリッキーだったが、本作も一筋縄でいかないところがある。

物語は小山内賢、正木竜之介、三角哲彦という三人の男が「瑠璃」という名前の様々なカタチ? で現れる不思議な女に翻弄され、時間と人間関係が交錯していく。
「瑠璃」に惚れられた三角哲彦はいいとしても、小山内賢と正木竜之介は悲しいね。
中でも正木竜之介は切ない。
彼の人生とは何だったのだろう?

小説自体、なかなか複雑で手ごわいのだが、平易な文章で細かなデテールまで描ているので、なんということもなく読んでしまう。
というか、振り方が思わせぶりで読まされてしまう。

途中、正木瑠璃という正木竜之介の妻が、不倫の恋人の三角哲彦に語る部分がある。
「神様がね、この世に誕生した最初の男女に、二種類の死に方を選ばせたの。ひとつは樹木のように、死んで種子を残す、自分は死んでも、子孫を残す道。もうひとつは、月のように、死んでも何回も生まれ変わる道。そういう伝説がある。死の起源をめぐる有名な伝説。知らない?」
これが、この小説のキーとなる。

描いているのは、ものすごく深刻な事件や事故といった事象なのだが、温度や湿度の低い文章のためグイグイとくるものが少ない。
ややもすれば、退屈な印象すらある。
でも、最後まで読まされてしまう。
このあたりに、作者の力量を感じる。

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