ジェフリー・ディーヴァーの『スキン・コレクター』である。
基本、ジェフリー・ディーヴァーは嫌いではないが、その緻密なストーリーや濃密な文章のせいか、読むのには少々、覚悟が必要な気分がある。
そんな訳で特に予定のないゴールデンウイークということもあり、読むにはいい機会だろうと手に取ってみた。
本作はリンカーン・ライムシリーズの第11作、最新作である。
主人公のリンカーン・ライムは事故で首の上と左手の薬指しか動かせない四肢麻痺という元科学捜査官。
ニューヨーク市警のアメリア・サックスという女性警官(シリーズの半ばから刑事になる)を助手とすることで、様々な難事件を解決してきた。
いい意味でも、悪い意味でも相変わらずの安定感。
少々、新鮮味に欠けてきた感とか主人公のリンカーン・ライムが鼻についてきた印象もあるが、やっぱりよくできている。
ミステリーとしてのレベルと完成度は高い。
2016年度の「このミステリーがすごい!」海外編で1位になったのもうなづける。
物語の舞台はニューヨーク。
被害者は毒物による刺青を刻まれ殺害されるという異常な連続殺人事件が発生する。
少ない証拠の中に、主人公が以前解決した事件(『ボーンコレクター』という作品で描かれている)との関連が判明する。
一方でライムが過去に捕らえた天才犯罪者の名前(『ウォッチメーカー』という作品で描かれている)が浮かび上がってくる。
ストーリーは、かなり込み入っているのだが、物語の中で登場するホワイトボードの書き込みのように箇条書きでこれまでの流れやキーワードを整理してくれるのがありがたい。
終盤はこういう展開だったのかというビックリするような仕掛けだが、やや、やりすぎというか冗長な感じがしない訳でもない。
タトゥーの文化的な側面やヒ素やシクトキシン、ボツリヌス菌などの毒物についての情報も満載。
「市民ミリシア」と言われる市民武装集団に多いキリスト教原理主義的な団体の問題や、白人至上主義のヘイトグループといったところをテーマに持ってきたところなど、著者の現在のアメリカ国内における問題の危機意識が感じられる。
翻って日本をみても同様の問題がありそうである。