真山仁の『グリード』である。NHKでドラマにもなった経済小説『ハゲタカ』シリーズの最新刊。
舞台はリーマンショック直前のアメリカ。
サブプライムローンの破綻に端を発するウォールストリート発の世界金融恐慌。
この混乱に乗じてアメリカを象徴するような企業を買収しようとする、主人公の鷲津が社長を務める投資ファンド。
このたくらみを阻止しようとするのが、市場の守り神を標榜するアメリカの大物投資家。
この構図からすれば、主人公が悪役と言った感じだが、そう、物語は単純でない。
終盤の展開から結末までは、主人公と同じ日本人からしたら痛快かもしれないが、話がうまく進みすぎて少々、無理を覚える。
どうもフィクション故に筋立てが主人公の都合のいいように進んでいくあたりが、真実味が希薄になってしまっている原因のような気がする。
そのぐらい、主人公の意図したように市場も人間関係も運んでいく。
おそらくリアルなサブプライムローンの破綻を描いたノンフィクションの方がドラマチックだし、人間の葛藤や陰影が描かれているのではないだろうか?
アカデミー賞を受賞した『ウォール・ストリート』という映画で監督のオリバー・ストーンはマイケル・ダグラス演じるカリスマ投資家のゴードン・ゲットーに「強欲は善だ(Greed is Good)」と言わせた。
このシーンは妙に印象深く、今でも記憶に残っている。
『グリード』というタイトルは、おそらく、この名セリフからインスピレーションを受けたのかなと。
リーマンブラザースが破綻したのは2008年の9月。
だから、今から、もう6年ほども前の話である。