『コラプティオ』真山仁
真山仁『コラプティオ』
スポンサーリンク

真山仁の『コラプティオ』である。
これまでも真山仁の小説はいくつか読んでいるが、あまりはずれたことがない。
今回も手堅くまとめてある。

コラプティオとはラテン語で「疑獄」という意。
内容は日本の政府を舞台にしたポリティカルスリラー。
なかなか濃密な小説だ。
ストーリーも結構、込み入っている。

東日本大震災の後、救世主のように現れた総理と、彼を取り巻くブレーンや官僚、そして新聞記者との人間ドラマと言えるが、原子力政策やアフリカへのODAの問題や権力の独裁の危うさなどが複雑に絡み合って物語は紡ぎだされていく。

総理大臣の宮藤隼人は原子力発電所を輸出することで震災後の日本を再生しようと強いリーダーシップで政策を推し進める。
そうした総理を信じて支える若き内閣調査官の白石と元自衛官でやり手の総理秘書官の田坂。
こうした中で語られる日本の原子力政策が物語の軸となる。
一方、アフリカのODAをめぐる問題が発覚すると物語は、権力者の暴走といったところにテーマは移っていく。

作品に登場する総理と現政権の総理を含めた歴代の総理の姿が重なって見えるのは自分だけだろうか? どうも、実在の人物と重なって見えてしまう登場人物が多いし、エピソードについても実際に起こった事件と重なる部分が多い。
その分、良くも悪くも物語の輪郭がはっきりとイメージできる。

小泉総理時代の飯島勲総理秘書官を髣髴とさせるような田坂という元自衛官でやり手の総理秘書官のキャラがいい。
彼が喫煙室でレッド・ツェッペリンの「天国への階段」を聴きながら主人公の若き内閣調査官に、自分が仕える総理への気持ちが離れてしまった心情を吐露するシーンはかっこよすぎる。
今の日本や政治を考えた時に、様々な示唆や教訓を読み取ることができると思う。


スポンサーリンク

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事