江國香織『抱擁、あるいはライスには塩を』
江國香織『抱擁、あるいはライスには塩を』
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江國香織の『抱擁、あるいはライスには塩を』である。
結構、厚い本で読み始めるまでちょっとした覚悟が必要だった。

著者の書いたものを読むのは初めてだったが想像したとおり女性らしい小説を書く人だった。
女性の感性をくすぐる(であろう?)、ツボを押さえた設定やディテールの細やかさとセンスの良さ。
男が読むには気恥ずかしささえ覚える、きわめてフェミニンな小説。

登場する一家やその家族に関わる人物の視点で描かれた短い一篇が集まって長編を構成している。
森の木々のような一篇一篇は物語性が希薄だが、森を見るとそこにはゆったりとした通奏低音のような大きな物語が流れている。

はたして主人公はだれなのだろうか? ファンタジーともいえるような不思議な愛に包まれた家族(男女)たちのストーリーが各々の時間や視点を変えて描かれている。
男女の恋愛や愛憎劇のようにも思えるが、ここで描かれているのは「憎」の文字があまりにも希薄なエキセントリックともいえる一家だ。
なぜかわからないが、このクールで乾いた感じが妙に心地よい。

読んでいる間、昔、亡くなった東京の伯母さんが「近所に白系ロシア人がいてね…」なんてことを、しょっちゅう言っていたのを思い出した。
よい小説だと思った。

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