奥田英朗『空中ブランコ』
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終日、山形市にある県立図書館で過ごす。
昼食後、図書館にもどり奥田英朗空中ブランコ』を一気に読了。
「軽妙洒脱」という四文字熟語があるが、まさにそんな感じ。

異なる章ごとに、跳べなくなったサーカスの空中ブランコ乗りや尖端恐怖症のやくざといった精神的な悩みを持った個性的な患者が登場。
主人公の精神科医、伊良部一郎の結果オーライ的ともいえるメチャクチャな診療や行動を通じて患者の病気や悩みを解決していくという一話完結の短編集。

主人公の精神科医、伊良部一郎は伊良部総合病院の御曹司であり、この病院の当病院副理事も務める。
こうしたお金にも出世にも執着する必要のない環境がそうさせたのか、天真爛漫(?)な世間に頓着しない子供がそのまま大人になったような医師に患者は振り回される。
マユミという伊良部のもとで働くナゾのセクシー系看護師もいい味を出している。

くせのないニュートラルな文章のせいもあり、スラスラと読める。
さすが、平成16年度、第131回直木賞受賞作。
シーンによっては思わず吹き出してしまうほど面白い。
図書館で読むには危険な本だ。
ブゥーッと吹き出しそうになっては周りに目配せし、なにごともなかったかのように、また、活字に目をおとす。
くだらないと言えばくだらないのだが、それだけではなく心の琴線に触れる、ほろりとさせるような部分があるのがよいのだね。
ついでながら本作は『イン・ザ・プール』という同じ伊良部医師が登場するシリーズの第2弾である。

最後の女流作家という章が泣かせる。

■―義父のヅラ―より(くだらない)
「そうそう。その並木橋の交差点をすぎて坂を上がった途中に歩道橋があって、その横っ腹に『金王神社前』と書いてあるわけ。バスでその下を通るたびに、クラスメートたちと、ああ、あの『王』の字に点をつけて『金玉神社前』にしてえなって・・・」

■―女流作家―より(泣かせる)
「この国で映画の仕事やってると、こんなのばっかりだよ。ここで報われないとこの人だめになる、だから神様お願いですからヒットさせてくださいって天に手を合わせるんだけど、それでも成功することのほうがはるかに少ない。あたしは彼らを前にして思うよ。せめて自分は誠実な仕事をしよう、インチキだけには加担すまい、そして謙虚な人間でいようって――」

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