笹本稜平『K2 復活のソロ』
笹本稜平『K2 復活のソロ』
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笹本稜平の『K2 復活のソロ』です。
最近では作者の笹本稜平は山岳小説の第一人者といった感がありますね。
そんなわけで、山岳小説好きの自分は、つい、彼の小説は手に取ってしまいます。
山登りのエキスパートたちは本作を読んで、どんな感想を持つのか知りたいところですが、里山専門の自分は、結構、面白く読むことができました。

タイトルにある「K2」はパキスタンと中国の国境地帯にあるカラコルム山系の世界第2位の標高の山。
標高は8611メートルで、エヴェレスト(標高は8850メートル)に次ぐ高さ。
その存在は人里を離れた秘境の奥地にあるため、19世紀末まで知られることがなく名前さえなかったといいます。
ちなみに「K2」とはインド測量局の「カラコルム第2号(Karakorum No.2)」という測量記号のことで、世界第2位という理由からついた名前ではありません。
そういう意味では「K1」や「K3」、「K4」…といった山もありますが、各々、マッシャーブルムやブロード・ピークといった名前を持ち、唯一「K2」のみが測量記号の山名となっています。
登頂の難易度は人里から離れた奥地に存在するというアクセスの悪さと独立峰であるがゆえの天候の予測の難しさからエヴェレスト以上といわれています。

さて、本作です。
読み始めから、もう、主人公の奈良原和志とパートナーの柏田俊二はアマ・ダブラムというヒマラヤ山系の壁にとりついている。
早々にパートナーは亡くなるし、いきなりもう、クライマックスですかといった感じ。
そんなわけで山に登っているシーンが圧倒的に多く前半後半どこを切っても、これ山岳小説。
山登り以外の要素はほとんどありません。
専門用語も多く、山に興味のない人にはつらいかも。
そもそも、そういう人は手に取らないと思いますが…。

作中ではトモ・チェセンという、実在する登山家の実際にあったエピソードが取り上げられたり、猪熊隆之氏をモデルにしたのであろう日本の山岳気象予報士が登場したりと現実世界のものを上手く物語に盛り込んでいます。
サミッターと呼ばれるような登山家たちの登山に対する考え方や問題意識などもリアルに描かれ、彼らの「現在(いま)」がよく分かるような作品です。
主人公のスポンサーともいえる、所属する登山用品のメーカーのマーケティング担当者がせっせとSNSで情報を発信しているような部分を読むと、山登りもSNSの時代なんだなぁと。
昨年、亡くなった登山家の栗城史多氏を、ちょっと思い浮かべてしまった。

ところで、本作では日本刀を作る玉鋼で新型のアックス(カマキリのカマのような岩や氷を登る道具)を製作し使っていたが、スペック的に本当に玉鋼ってアックスに向いているのでしょうか?
普通はスチールやクロモリ鋼といわれるスチール合金なのですが…。
このあたり、本当なのか、よくわかりません。
蛇足ながら、今日、現在(2019年9月22日)、本作の主人公が成功した「K2」の冬季単独登頂に成功した登山家は、まだ、いないようです。

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