『ベイジン』真山仁
真山仁『ベイジン』
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真山仁の『ベイジン』である。
オリンピックを直前に控えた中国が舞台のポリティカルエコノミー小説。

気分はほとんどプロジェクトⅩです。
BGMはもちろん中島みゆきの「地上の星」。
風の中のすばる 砂の中の銀河♪~

中国で世界最大の原子力発電所を建設するために日本人技術者と中国人担当者が文化や価値観の違い、政治体制の特殊性から発生する様々な障害や軋轢を乗り越えてオリンピック開会式にあわせた発電所稼動のために獅子奮迅の働きをする。
しかし、稼動を祝うセレモニーの後に待ち受けていたのは、最悪の事態を予想させる原子炉の事故であった。

発電所で火災が発生し、重大事故へ波及するくだりはやや安易な感じがしなくもありませんが、全体としての真実味と説得力は確かなものがあります。
フィクションですが、実在する企業名や中国で実際に起こった汚職事件などを髣髴とさせるエピソードなども克明に描かれており、改めて中国で事業を行うことの難しさや、その特殊性を考えさせられます。

司馬遼太郎は「競争原理の作動」という文章の中で儒教的専制君主国家という言葉を使い、中国あるいは朝鮮式の過去の専制体制は、競争の原理を封殺するところにその権力の安定を求めたと説いています。
それは、ある意味、現在の中国にも同じことが言えるのかもしれません。
共産党という専制君主が儒教的な臭気が抜けない社会で競争原理が働かないシステムをつくっているともいえる気がします。

昨年、中国で商売をするために上海にマンションを借りて事業を始めた知人がいますが、こうした小説を読むと、すこしばかり心配になります。
蛇足ながら「ベイジン」とは言うまでもなく中華人民共和国の首都、北京のことです。


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