貴志祐介『新世界より』
貴志祐介『新世界より』
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貴志祐介の『新世界より』です。
今年読んだエンターテイメントの中ではボリュームも面白さも超弩級のSF?、ファンタジー?、ホラー?、青春小説?、…。
そんな小説だ。
寝食を忘れ、むさぼるように読んでしまった。
オススメです!

物語の舞台は1,000年後の日本。
自動車も飛行機もテレビもコンピュータもない。
そうした牧歌的ともいえる日常の不便さを人々は呪力(テレキネシス)とバケネズミといわれる異形の生物の労働力で補い生活している。
世界は呪力を使える人間こそが普通の人間とみなされているのだ。
しかし、頭で念じただけで物質を移動させたり、形を変えたりすることができる呪力を自在に操ることができる人間が普通に存在する社会とは、核兵器のごとき危険な武器を手にした人たちがそこらじゅうにいるような社会にほかならない。
そのため人間は遺伝子の中に愧死機構(人を殺すと、自分も死んでしまうという自殺システム)と同種に対する強力な攻撃抑制を持つよう進化した。
また、遺伝子工学や核兵器の情報や過去の戦争の歴史など、人間の倫理観に大きな影響を与える情報は厳重に管理されている。
こうして行政は人々を厳重に管理していたが、しかし、そこには大きな危うさが潜んでいた。

以上のような独特の世界観がしっかり描きこまれていること、そして、その世界観を構築するアイディアが素晴らしい。
内容はかなり殺伐とした部分もあるが、作者の描く情景は牧歌的であり、主人公が様々な矛盾を感じながら成長して社会の危機と立ち向かっていく。

いずれにしても単なる冒険譚やSFとは違う、奥行きのある小説となっている。
2008年、第29回日本SF大賞受賞作。

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