藤沢周平の『よろずや平四郎活人剣』です。 十数年前に読んで以来、本作を読むのは二度目。 ずーっと、また読みたいなぁと思っていた。 連作の短編集で結構、長い作品だが今回も面白く読むことができた。 娯楽時代劇という言葉がこれほどピッタリな小説はないのではなかろうか。 まず、詩情がありユーモアがある。 そしてラブストーリーも...
十六夜亭
いずれの記事も、きわめて個人的かつ主観的な内容です。
軽慮浅謀、無知蒙昧、優柔不断、短慮軽率、独断専行、妄評多罪のこと、お許しください。
まぁ、ゆるーく読んでいただければありがたいです。
ハイ。
十六夜亭の記事一覧
磯田道史の『無私の日本人』である。 本作は穀田屋十三郎たち、中根東里、大田垣蓮月という人物たちの生きざまを描いた三部の評伝で成っている。 いずれも苛烈なまでの慈恵の心を持った清廉な市井の人たちである。 ノンフィクションではあるが小説のようにも描かれ、その語り口は、司馬遼太郎とも似ている。 そういえば、司馬遼太郎は日本が...
万城目学の『悟浄出立』である。 久しぶりに読む万城目学の小説。 『鴨川ホルモー』や『偉大なる、しゅららぼん』といった長編の摩訶不思議な面白青春小説は読んだことはあるが、そうした系統でない、しかも短編の小説は初めて読んだ。 なんか、作者の底力を見せられた感じ。 当初は短編集だとは思わず最初の「悟浄出立」の一篇を読み終え、...
宮下奈都の『羊と鋼の森』である。 なるほど、タイトルの『羊と鋼の森』とは、ずばりピアノのことだったのですね。 ピアノという楽器は、本書でも説明されている通り、鍵盤を押すとボディーの中に張られた鋼鉄製の弦(ピアノ線)をハンマーが叩いて音を出すという構造になっている。 つまりは羊はハンマーに張られたフェルト。 鋼は、ハンマ...
車谷長吉の『赤目四十八瀧心中未遂』である。 口当たりのよいものばかりが好まれる時代だが、本作は時代におもねることのない、なんともパンキッシュな小説だ。 我が家の朝食は、いつもNHKラジオの朝の番組が流れているのだが、その中でパーソナリティの高橋源一郎が昔、車谷長吉の人生相談が面白いと紹介していたのが気になり、どんな小説...
ジェフリー・ディーヴァーの『限界点』である。 翻訳は土屋晃。 原題は『EDGE(エッジ)』。 “EDGE”を辞書で引くと「〔競技などで〕小差[僅差]で勝つ、接戦をものにする」という意味も載っている。 そうした意味ではタイトル通りの内容である。 アメリカには証人保護プログラムという制度がある。 重大事件の関係者や犯罪の司...
沢木耕太郎の『波の音が消えるまで』である。 なんというか、じつに男に都合のよい小説である。 という訳で、男の自分としては、ある種のヒリヒリするような憧れをもって読み終えた。 作者の沢木耕太郎は、自分が学生の頃、ライターを目指そうとしていた人たちにとってカリスマだった。 自分の周りにも、そうした先輩がいたが酒を飲みながら...
高橋義夫の『さむらい道』である。『さむらい道』と書いて「さむらいみち」と読ませる。本作は戦国時代から江戸時代初期まで、主に山形県の村山地方を治めた(後に庄内など日本海側も領地となる)出羽山形藩の初代藩主、最上義光の生涯を描いた歴史小説である...