『黒牢城』米澤穂信
米澤穂信『黒牢城』
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米澤穂信(ほのぶ)の『黒牢城(こくろうじょう)』です。
2022年の第166回直木賞、第12回山田風太郎賞を受賞。
他にも、『ミステリが読みたい!』、『週刊文春ミステリーベスト10』、『このミステリーがすごい!』、『2022本格ミステリ・ベスト10』の国内部門で1位に選ばれたという、輝かしい作品です。
作者の米澤穂信という名前は知っていましたが、今回、初めて読んでみました。
現代を舞台にした推理小説を書く作家というイメージがありましたが、こうした戦国時代を舞台にした推理小説というのはなかなかトリッキーです。
で、あらすじといえば、次のような感じです。

天正六年(1578年)十一月、織田信長に仕える荒木村重は突如、反旗を翻す。
信長軍は石山本願寺と合戦のさなかのことである。
有岡城主の村重は本願寺側につき、信長軍に対し籠城戦で抗する。
すると村重に謀反を考え直すよう、秀吉軍から一人の武将が使者として送られる。
それが、豊臣秀吉の軍師として知られる黒田官兵衛だった。
官兵衛は村重を説得するも捕らえられて土牢に幽閉されてしまう。
一方、有岡城の中では籠城戦という極度に緊張を強いられる状況のさなか、次々と犯人不明の奇妙な殺人事件(戦国時代の合戦の最中に“殺人事件”と書くのも違和感を覚えますが…)が発生。
村重は部下たちに命じて事件を解明しようとするが、いづれも行き詰ってしまう。
悶々とする村重。
そんなとき、彼の足は、なぜか土牢の官兵衛のもとに向いてしまうのだった…。

舞台となる有岡城は現在の兵庫県伊丹市にあります。
村重が城主になる前は、伊丹氏が城主でしたが村重が城を落とすと改修し有岡城と称するようになりました。
信長軍に対し村重軍は籠城戦で抗うわけですが、籠城戦といっても、一般にイメージする籠城戦とはかなり状況が異なります。
城は「総構え」という城下町や田畑自体が堀や土塁に囲まれた構造だったため、兵糧が乏しくなるまではそこそこの余裕がありました。
そのため、戦はじりじりとした膠着状態が長く続きました。
そうした中で、殺人事件が発生するのですね。

全体に骨太のどっしりとした感じの作品です。
歴史小説に密室殺人のトリックを織り込んだような作品。
そうした意味では、斬新です。
読みどころは部下たちとの確執や籠城という状況下での神経戦などでしょうか。
たくさんの賞を受賞した誰もが認める作品ですが、個人的には、「それほどの傑作かなぁ」という感じがしなくもありません(スミマセン)。
正直にいえば、なんというか、自分の中では印象の薄い作品でした。
いわゆる「刺さらなかった」というこですね。
これは、作品がよくないということではなく、単に相性がよくなかったということで…。
ひとつ、よしなに。

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