『テスカトリポカ』佐藤究
佐藤究『テスカトリポカ』
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佐藤究の『テスカトリポカ』です。
第165回直木賞、第34回山本周五郎賞を受賞。
直木賞の選考では暴力シーンが残虐で賞にそぐわないとの激論があったとか。
小生はドン・ウィンズロウの『犬の力』シリーズで麻薬カルテルの暴力的なシーンには免疫ができていたので、さほど、ショックは受けなかった。
それでも作中に登場した「粉」といわれる拷問の方法には驚いた。
こんな、エグい拷問の方法があったのか…と。

物語は1996年のメキシコから始まる。
読み始めて、「これはシロアナカルテル『犬の力』の世界か?」とワクワクしながら読み進めたが、そうでもなかった…。
まず語られるのは主人公であるメキシコ人と日本人のハーフ、土方コシモの母親の生い立ちである。
これが、ちょいと長い…。
…で、2015年、十三歳のコシモは川崎で父親を殺害し少年院へ入ることになる。
一方、同じころメキシコでは麻薬カルテルのバルミロ・カサソラは敵対組織に追われるようにインドネシアのジャカルタへ行方をくらます。
バルミロは、そこで、臓器ブローカーの末永と出会う。
このあたりから、話は麻薬から臓器ビジネスへと変わっていく。
川崎に流れ着いたバルミロはコシモを迎える…。

タイトルの『テスカトリポカ』とはアステカ神話の神様の一柱で最強の邪神だそう。
名前は「煙を吐く鏡」という意味だとか。
ここでいう鏡とは、メソアメリカ一帯で儀式に使用された黒曜石の鏡のことだという。
この作家、なんか、鏡が好きですね。
というのも、以前、読んだ『Ank: a mirroring ape』という作品も鏡が重要な小道具として使われていました。
読み進めていて、メル・ギブソンが監督した『アポカリプト』という映画を思い出した。
この映画もメソアメリカのマヤ文明を舞台にしたもので、なかなかエグいシーンが多かった。

全体に人物を描くためのサイドストーリーが結構な部分を占めていて、本筋の見通しがよくない。
どうも、主人公が誰なのか判然としないところもあるし、話も麻薬がテーマのクライムノベルと匂わせておいて臓器ビジネスへと展開していったり…。
力を入れて描かれているところがサイドストーリー的なところであったりで、どうも、散漫な感じがある。
そのせいか、自分は、もう一つ、話に乗り切れなかった。
自分が編集者なら「先生、三分の一ぐらい削った方がいいですよ」といってしまうかも…。
(スミマセン)
間違いなく、力作だとは思うのですが…。


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