『テスタメント』ジョン・グリシャム
ジョン・グリシャム『テスタメント』
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ジョン・グリシャムの『テスタメント』です。
翻訳は安定の白石朗。
ミステリー好きには「いまさらグリシャムですか」という感じですが、ずっと積読になっていたものを、たまたま手に取ってパラパラめくっていたら止められなくなってしましました。
ジョン・グリシャムといえば、リーガルスリラーの大家。
1990年代には『評決の時』や『法律事務所(ザ・ファーム)』、『ペリカン文書』といった作品を始め映画化されてヒットした作品もたくさんあります。
本作も法廷ものといっていい内容ですが、他のグリシャムの作品と比べると、少々異色な印象を受ける作品です。

物語は資産110億ドル(日本円なら1ドル100円換算で1兆1千億円といったところでしょうか)、七十社の企業を所有する七十八歳の実業家の老人、トロイ・フェランが自殺することから始まる。
それも、3人の精神科の医師による精神鑑定で異常なしというお墨付きをもらった直後に。

彼には3人の妻と六人の子どもがあった。
最初の妻には四人、二人目の妻との間には二人(うち一人は死亡)、三番目の妻との間には、十代後半になる子どもが一人。
この子どもたちが、甘やかされて育った? あるいは父親不在で育ったせいかろくでもない人物たちばかり。
トロイ・フェランは自分の遺産を、そうした子どもたちに遺すのを避けるために自殺する寸前に遺言状を書き換えてしまう。
書き換えられた遺言状には公にされていないの自分の、もう一人の娘のレイチェル・レインを遺産相続人にするようにとあった。
レイチェルの手掛かりは遺言状に記されたアマゾンの奥地でキリスト教の布教活動に奉仕しているという情報のみ。
フェランの顧問弁護士のジョシュア・スタフォードは、アルコール依存症で事務所のお荷物となっているパートナーのネイト・オライリーにレイチェルの消息をつきとめるよう命じる。
一人、アマゾンの奥地に向かうネイト。
一方、他の子どもたちは各々、弁護士を立ててトロイ・フェランが精神的に正常ではなかったとの疑義を申し立て訴訟を起こし遺産分与を目論む。
ネイトは苦労の末、アマゾン奥地の部族が暮らす村でレイチェルと出会うことができたが、彼女からは遺産に興味はなく関わることも望まないと告げられる…。
これで、話は終わらず最後には大どんでん返しが待ち受けるのだが、ここでは語らない。

決して、ハッピーエンドという結末ではありませんだしたが、自分はよいエンディングだと思った。
いずれにしても、本作は失墜のどん底にあったネイトの再生の物語であり、彼自身の自分探しの物語でもある。
ちなみに、タイトルの「テスタメント」には「遺言状」という意味と「契約」という意味がある。
本作を読むとネイトとレイチェルとの「契約」という意味合いが大きく思えるのが、何ともにくい。

装丁をまじまじと見て、気が付いた。
タイトルより、著者のジョン・グレシャムの文字の方が目立っている。
そうだよね、昔はジョン・グレシャムというだけで売れていた。
本作が、ブックオフの100円コーナーというのは、あまりにももったいない。
他にも100円コーナーで購入したグリシャム作品があるはずなので、そのうち読んでみよう。

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