恒川光太郎(つねかわこうたろう)の『金色機械』です。
初めて読む作家の小説です。
図書館で『金色機械』という、摩訶不思議なタイトルが目にとまり、パラパラめくってみたら時代小説のような内容だったので、“機械と時代小説”というギャップにひかれ借りてみました。
アイディアが秀逸で、なかなか、面白かったです。
時間軸が過去へさかのぼったり、主人公の女の数代前の先祖の話があったりと構成はトリッキーですが、終盤になりそれまでの伏線が上手にまとめられています。
内容は伝奇小説的なSFといったところでしょうか。
そのせいか、読んでいて伝奇SFの大家、半村良を思い出しました。
とはいえ、半村良ほどのレベルには達していないかなぁ…。
あらすじを説明すると、どうしても本作のアイディアのキモに触れないわけにはいかないのでネタバレになってしまいますが、簡単に説明するなら、まぁ、こんな風です。
時代は江戸時代。
場所は実在する地名は現れませんが、推察するに今川義元の領地の隣国あたり。
ある不思議な能力を持った女が「金色様」と呼ばれる金色のロボットと偶然出会い、一緒に亭主の敵討ちを行う。
その過程で、「金色様」と繋がる女の過去や先祖に関わる多くの不思議なドラマが語られる。
江戸時代にロボットがいたという、アイディアが秀逸。
当然、当時の人々は「金色様」がロボットだという認識はなく、神様のようなモノとして崇めている。
また、ロボットであるがゆえに初期化すれば男や女などの性別はもとより、そのキャラクターを書き換えることができるというのも面白い。
その金色の姿かたちを想像すると、我々、現代人はどうしてもスターウォーズのC3POが脳裏に浮かんでしまう。
ただ、内容はよいのだけど「ちょっと、もったいないなぁ」という印象も。
時代は安土桃山時代から江戸時代にもかかわらず、所々に時代劇にはそぐわない、現代的な言葉遣いが使われていることに興をそがれる。
例えば江戸時代に「機械」という言葉は使われていなかったのではないのかなぁ?
また、会話でも「そうよ、兄上。黙って勉強したら」という言い方は当時はしていなかったのではなかろうか?
値引きをする意味での「勉強」という言葉はあっても、学習という意味での「勉強」の使い方は明治期以降のはず。
主人公の女の名前が「遥香」というのも、あまり、昔っぽくない。
でも、このぐらいのことは作者は当然、知っているはずだから若い読み手に迎合したのかなともおもう。
しかし、ストーリー自体は面白かったし読んで損はない。