『ザ・ボーダー』ドン・ウィンズウロウ
ドン・ウィンズウロウ『ザ・ボーダー』
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ドン・ウィンズウロウの『ザ・ボーダー』です。
翻訳は田口俊樹。
なんか、もう「スゴイ」としかいいようがない。
クライムノベルの枠を超えた壮大な人間ドラマに仕上がっている。
読み終えて、やはり、ドン・ウィンズウロウは現在のミステリーの最高峰だと再認識。

本書は主人公である麻薬捜査官のアート・ケラーとメキシコの麻薬カルテルとの戦いを描いた『犬の力』、『ザ・カルテル』といった骨太の物語を締めくくる完結篇となる。
本作では過去の作品の人物や本作で初めて登場する敵味方など多くの人物が登場し、各々の視点で、それぞれのドラマが綴られる。
ヴォリュームもあるし人間関係も複雑で、誰にでもおススメできる内容ではないが、それでも妙々たる活字の海にどっぷり浸りたいという方にはおススメです。

ところで『犬の力』、『ザ・カルテル』は角川文庫だったのだが本作はどうしてハーパーコリンズ・ジャパンという出版社に変わったのだろう?
ちなみに、ハーパーコリンズは世界最大の出版会社の一つで、ペンギンランダムハウス、サイモン&シュースター、アシェット、マクミランと並んで、ビッグファイブといわれる英語出版会社。
日本では翻訳物の恋愛小説専門のレーヴェル、ハーレクインの出版社として知られている。
別に角川文庫の肩を持つわけではないが、シリーズ物は同じ出版社から発行してもらった方が、本棚に並べるにしても座りがよいような気がする。

さて、本書の内容である。
物語は2014年5月、主人公のアート・ケラーが麻薬取締局(DEA)の局長に出世? したところから始まる。
メキシコではアート・ケラーが追い続けた麻薬組織シナロアカルテルの盟主、アダン・バレーラの死亡が確認される。
最大の麻薬組織の盟主の死亡が確認されたことで組織を構成する派閥が金と権力を求め、それぞれ、熾烈な抗争を始める。
一方、アメリカでは大統領候補の娘婿(トランプ大統領の娘婿を思わせる)が、メキシコの麻薬組織のマネーロンダリングに関わっていることが判明。
新任の大統領が当選し麻薬取締局局長の任期もあとわずかというとき、アート・ケラーは自分の前に立ちはだかる大きな権力に抗するために自爆ともいえるような行動に出る。
最後の章では『犬の力』、『ザ・カルテル』といったこれまでの作品も含め、全体の大きな流れを総括している。

トランプ大統領、人種差別、イラン・コントラ事件をはじめとするアメリカの中南米への介入、グアテマラからの難民、etc。
麻薬もそうだが、本作はアメリカを取り巻く多くの問題や実際にあった事件などが下敷きになっている。
そのため、各々の問題に対する作者の考えも反映されている。

前作の『ザ・カルテル』を読んだのは4年前。
もう、どんな内容だったか細かなところは忘れてしまっていた。
それにもかかわらず、最初の数ページを手繰ったとたん、あっという間にメキシコとアメリカの麻薬戦争の世界に引き込まれた。
ストーリーも緻密でよくできているが、基本、文章がよいのだとおもう。

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