唯川恵『淳子のてっぺん』
唯川恵『淳子のてっぺん』
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唯川恵の『淳子のてっぺん』です。
女性で世界で初めてエベレストの登頂に成功した登山家、田部井淳子をモデルにした小説。
田部井淳子はテレビやラジオなどメディアにも時々、登場していたので、その優しそうな笑顔や声は記憶にある。
このオバちゃんが女性として世界で初めてエベレストに登ったのかというぼんやりとしたイメージはあった。
しかし、本作を読むまでは彼女の成し遂げた偉業の実態というのは知らなかった。
今でこそエベレスト登頂と聞いても、それほど驚かないが(いやいや、今でもスゴイ)、当時は本当にすごいことだったようだ。

物語は谷川岳・一の倉沢、アンナプルナ、エベレストの三つで構成される。
福島県の三春町に生まれた淳子は小学校の時に教師に引率され栃木県にある那須岳に登り、以降、福島の山々で登山の面白さを知る。
淳子は東京の大学に進学、その後、社会人になり山岳会に入会しクライミングの技術を磨いていく。
やがて、冬季、一ノ倉沢衝立岩中央稜を笹田マリエ(モデルは佐宗ルミエ)と女性だけのペアで初登攀に成功。
また、サスケの異名を持つ登山家、田名部正之(モデルは夫の田部井政伸)と知り合い、淳子の母親に反対されながらも無事、結婚。
そして、アンナプルナⅢ峰、エベレストといった海外の山を、いずれも女性だけでパーティーで登ることを目標にして成し遂げていく。

本作を読むと昭和40年代の日本の登山界の雰囲気がよくわかる。
そこで洗礼を受けた人たちが、今の中高年の登山ブームを牽引しているわけである。
また、作者や主人公が女性ということもあるせいか、夫である田名部正之と結婚するまでの馴れ初めから淳子の母親に猛反対されながらも結婚に至るまでのエピソードや結婚後の生活といった普段の日常もよく描かれている。
よくいわれることだが、女性だけのグループで何かを成し遂げるというのは、男だけや男女混成の場合とはまた違う難しさがあるようだ。
本作でも、仲のよいグループのうち一人のメンバーが外れるとそのグループ全員が抜けてしまうとか、アンナプルナ登頂の前日や成功後の軋轢やわだかまりなどが描かれ、なかなか難しいなと感じるばかりである。

田部井淳子が癌で亡くなったのは2016年10月。
本作が新聞で連載されたのは2016年1月から2017年8月とあるので、執筆された途中でモデルの人物は亡くなったことになる。
モデルとなった人物が闘病中だということは、作者も当然、知っていたわけで、執筆には影響はしなかったのだろうか?
また、モデルとなった本人はどんな感想を持ったのだろう?
きっと伝記というよりは、やはり、小説として読んだ方がいいのだろう。
田部井淳子、自身が書いた著書もあるので、合わせて読んでみたいと思った。

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