奥田英朗『オリンピックの身代金』
奥田英朗『オリンピックの身代金』
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奥田英朗の『オリンピックの身代金』です。
2009年の第43回吉川英治文学賞を受賞した社会派ミステリー。
2段組みで500ページを超えるという大作。
本作の前に読み終えたのが、奥田英朗の『罪の轍』。
『罪の轍』を読み終えて、これは傑作だと感激してるうちに、以前購入した『オリンピックの身代金』がどっかに積読になってるはずだとタケノコのように積みあがった本の山からやっと見つけて読み始めた一冊。

時代は昭和39年の夏、日本中が東京オリンピックの準備と期待で熱くなっている頃。
オリンピック警備責任者のトップを務める警視庁幹部の家が放火されるという事件が発生する。
事件から1週間後、今度は中野にある警察学校が放火される。
警視総監宛てに届くオリンピックを妨害するという脅迫状。
警視庁刑事部捜査一課の刑事たちは事件の捜査を開始するが、犯人は思想犯と考える公安部との軋轢もあり捜査は難航する。
物語は捜査一課の刑事と犯人である東京大学経済学部大学院に在籍する青年の視点で構成される。
オリンピック景気で繁栄を誇る東京と経済成長からも取り残される地方の貧困。
オリンピックは、劣悪な労働環境で働く出稼ぎ労働者など、地方の犠牲があってのものであったことがリアリティをもって描かれている。

読み始めて警視庁刑事部捜査一課の登場人物が共通することにビックリ。
出版された時期は『オリンピックの身代金』、『罪の轍』の順ですが、作品自体の時代設定は『罪の轍』、『オリンピックの身代金』という順になる。
どちらも、漫画『三丁目の夕日』のような昭和三十年代を舞台にした犯罪ミステリー。
ニューラテンクォーターといった高級ナイトクラブや草加次郎事件なども取り上げられ、当時の世相が緻密に描かれている。

読んでいて犯人の視点と刑事の視点、両方から語られるエピソードの描き方に、少しばかり冗長なものを感じた。
『罪の轍』のほうが小説としての出来はよいと思う(本作の出来が悪いという意味ではない)。
そういう意味では『オリンピックの身代金』、『罪の轍』の順で読む方がいいかもしれない。
どちらも、読みごたえがありオススメです。
主人公が東大生だったためか、読んでいて三島由紀夫の『青の時代』といった作品を思い出してしまった。
もっとも、本作の主人公はアプレゲールとは、また、違う価値観で犯罪に走ったわけですが。

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