『後妻業』黒川博行
黒川博行『後妻業』
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黒川博行の『後妻業』である。
タイトルにもなっている後妻業という言葉は本書ではじめて知ったが、読んでみれば数年前に関西で実際にあった連続殺人事件のことが、すぐに脳裏に浮かんだ。
確か、犯人の老女(熟女だったか?)は結婚相談所に登録し、交際や結婚した老齢の男性を次々と殺害し相続した遺産は数億円にのぼったが、そのほとんどを株やFXとかで失っていたとかいう事件である。
後妻業とは遺産狙いで高齢の男性に近づき、遺産のほとんどを相続するという熟女のビジネス? のことをいい、最近は数人の遺産を次々と相続するといった後妻業のプロのような人もいるらしい…。
ほんまかな?

黒川博行の描く小説の舞台は、いつも大阪や京都だがこの小説も例にもれず舞台は大阪。
どういうわけか著者の小説に登場する悪党や犯罪は極悪非道にもかかわらず、のりのよい関西弁や単純でひょうきんな振る舞いのためか陰惨な感じがあまりない。
ないわけではないのだが、標準語でたんたんと描かれたものより真に迫る感じがもう一つしない。
このあたり関西の人が読むのと、それ以外の場所に住む人が読むのでは感じ方やニュアンスが違うのかもしれない。

物語は老人が公園で倒れたところから始まる。
亡くなった老人の二人の娘と遺産狙いで内縁の妻となった女との確執。
そして、その女を手繰る結婚相談所の経営者。
後妻業から遺産を守ろうとする娘の側に立つ弁護士。
こうした登場人物たちの間で生々しくどろどろした人間ドラマが展開される。

公正証書遺言を作成し、実の子どもや嫡流に遺産が相続されないようにするといった手口も細かく描かれなかなか勉強になる?…
遺産目当てで高齢の男性を積極的に殺害するような人はめったにいないだろうが、塩分のあるものをたくさん食べさせるとか、濃い焼酎をたくさん飲ませるとか消極的に寿命を縮めることに加担しているような女性は少なからずいそうな気もする。
この小説を読む限り殺人までは起こしていないにしても遺産相続目当ての熟年結婚というのは大いにありそうそうだし、今後、老人と貧困が増えればこうした犯罪自体、増えそうだ。
エンディングの呆気なさは小説としてはどうかと思うが、実際の犯罪というのはこういうシンプルな形で発覚するものなのかもしれない。


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