ピエール・ルメートルの『その女アレックス』である。
翻訳は橘明美。
「週刊文春2014年ミステリーベスト10」1位、「ミステリが読みたい!」「IN POCKET文庫翻訳ミステリー」でも1位になったことで昨年の暮れに評判になった作品。
ほかにも英国推理作家協会インターナショナル・ダガー賞(英国)、リーヴル・ド・ボッシュ読者大賞(フランス)といった賞も受賞している。
そんなわけで、遅まきながら読んでみた。
舞台はパリ。
ヒロインの女性が誘拐される事件から、物語は始まる。
犯人を追い詰める孤独な警部。
フランスのミステリーでよくみられる、犯人を刑事が追い詰めるといった展開からすればある意味王道。
第二部を読み終わったところでヒロインは亡くなってしまう。
なのにページ数は、まだだいぶ残っている?
いったいどうなるの? と思ったら予想外の展開が待っていた。
第一部は「かわいそうな女」、第二部では「恐ろしい女」、第三部では「哀しい女」という具合にヒロインに対する感情も激しく変わっていく。
作者は狙って書いたと思うが、このあたりはまんまと作者の意図にはまってしまった。
事件の真相を追い詰める、カミーユ・ヴェルーヴェン警部のキャラクターがよい。
高名な画家を母親に持つが、その母親が妊娠中もタバコをやめなかったために身長が145センチということもあり、やや屈折した心情を持つ人物として描かれている。
また、その脇を固める部下や上司も個性的な人物ばかり。
映画化の話もあるようだがエロさもグロさもあり、R18指定になるのは間違いない。
フランスのミステリーらしい湿度の高い、なんとも切なく濃密なミステリーだ。