竹森俊平『1997年-世界を変えた金融危機』
竹森俊平『1997年-世界を変えた金融危機』
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竹森俊平の『1997年-世界を変えた金融危機』である。

連日株価の暴落と円高が止まらないというニュースが街を賑わしている。
今日のニュースでは日経平均株価はバブル崩壊後の最安値7,607円88銭(終値)を5年6か月ぶりに下回り7,162円90銭だったと伝えている。
この数字は1982年10月以来なのだそうだ。
そうしたときにこの本を読むのは、まったくもってタイムリーだ。

この本で大きなページを割いて語られてるのが「ナイトの不確実性」とよばれる概念だ。
ナイトとはアメリカの経済学者フランク・ナイトのことでシカゴ大学でシカゴ学派という流れを作った。
以下に「ナイトの不確実性」を私なりに解釈してみる。
投資家や企業家たちは投資など将来、利益を得るための行動を未来がわからない不確実性のもとで行わなくてはならない。
しかし、この不確実性には投資が成功する可能性を「確率分布」として数量化できるものと「確率分布」として数量化できないものがある。
この前者を「リスク」といい後者を「真の不確実性」もしくは「不確実性」という。
「リスク」はそれが起こる確率を数量化することができるために保険などのビジネスでカバーできるし、予想が立つために経済としてさほど大きな問題には発展しない。
しかし「真の不確実性」はバブルを生んだり、はじけさせるなど経済においてしばしば厄介な問題を起こしてきた。

では「ナイトの不確実性」のもとで人々はどのように行動するのだろうか?
アメリカのエルスバーグという人物が行った面白い実験がある。
AとB二つの箱がある。Aの箱には赤のボールを50個と黒のボールを50個の合計100個のボールが入れてある。
一方、Bの箱には赤と黒のボールが合わせて100個(その割合はわからない)入っている。
この二つのうち、一つの箱から赤のボール(赤いボールを利益、黒いボールを損失と読み換えてもよい)を取り出したい。
例えて言うならAの箱は「リスク」である。
一方、Bの箱は「不確実性」である。
あなたなら、どちらから選ぶだろうか? エルスバーグによると大多数の人はAの箱を選ぶらしい。
ここから人間の心理として「不確実性」を嫌い「不確実性」のもとで、人々はより悲観的な予想を立ててしまう傾向があるといえる。
しかし、中にはBの箱を選ぶ人たちがいる。
彼らはチャレンジャーであり、ある意味真の企業マインドを持った人ということができる。
時として、その行動は大きな利益を生むことがある。
もちろん、その反対の場合もありえるが…。
以上が、私なりに理解した「ナイトの不確実性」である。

1997年は日本では北海道拓殖銀行や山一證券が倒産し、アジア通貨危機がおこった年である。
この本は、そのときにIMF(国際通貨基金)や世界の国々がとった対応を細やかに説明しつつ、その背景にある「ナイトの不確実性」の問題、そして最近のサブプライム問題にまで言及する。
サブプライム問題とは「住宅ローンの証券化」という「ナイトの不確実性」が起こした騒動なのである。
いまの経済状況を思い浮かべながら読めば、下手なミステリーよりよほどスリリングである。

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