川端裕人の『エピデミック』です。
オススメです。
面白いです。
スピード感あります。
C県T市(千葉県館山市であろう)の、崎浜という集落で重症化する謎のインフルエンザ患者が多発?
主人公の国立集団感染予防管理センター実地疫学隊隊員の島袋ケイトとそのチームは原因を究明し拡大を阻止するために調査を開始する。
人口3000人の町で1000人が感染し、重症者が死亡していく状況でも、なかなか感染源は特定できない。
様々な感染源が検討されたが、いづれ、崎浜地区にたくさん棲む猫が感染源と判明する。
それでは、その猫は何が原因で感染したのだろうか?
崎浜にはクジラの死体が時々打ち上げられる場所があるという。
そのクジラの肉を猫が食べたのでは…?
感染症発生から10日間の緊迫した状況を疫学的な見地からリアルに描いた秀作である。
疫学とは疾病(狭義では主に感染症)の発生原因や予防などを研究する学問のことである。
エピデミックとは医学用語のひとつで感染症(ひらたく言えば伝染病ですな)が急激に地域社会に広がっていく状態のこと。
ちなみに、感染症が国をまたがって急激に拡大していくことはパンデミックという。
本書では集団感染が発生してからの保健所や行政の対応、そして専門家が原因を究明していくための手法や考え方がしっかり描かれている。
へたな感染症予防の教科書より面白いし勉強になるのではなかろうか。
同じようなテーマの小説に篠田節子の『夏の災厄』というのもあるが、興味を持った方にはこれもオススメです。
装丁で使われているビジュアルが鮮烈である。
この絵はフランスの画家アンリ・ルソーの「戦争または馬駆ける不和」という絵画だ。