『旅のラゴス』筒井康隆
筒井康隆『旅のラゴス』
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筒井康隆の『旅のラゴス』です。
いい小説だなぁ。
でも、不思議な小説です。
なんか、つかみどころがないというか、何とも言えない浮遊感があります。
展開は、まるでロールプレイングゲームのよう。
だけど、ラストまで読めば、ちょっと違う。
コロナ禍で海外旅行はもとより国内旅行ですらままならない昨今、ささやかな旅のワクワク感を味わうことができる物語です。

タイトル通り、ラゴスという男が架空の世界を青年から老人にかけて行った旅の物語。
話は前置きなしに、いきなり、始まる。
主人公のラゴスは南へ向かう途中、リゴンドラへ向かう遊牧を生業とするムルダム一族のグループへ加えてもらう。
トラブル見舞われた彼らは、慌てて故郷のシュミロッカへ集団トリップ(集団での空間転移が可能な世界らしい)を行おうとするが、リーダーであるポルテツのやり方が上手くなく、なかなかトリップできない。
急きょ、パイロット役を引き受けたラゴスは、家畜や荷物も含め一人も欠くことなく無事、集団トリップを成功させる。
この最初のエピソードからラゴスの旅は始まる。

ラゴスはいろんな町で、困難なトラブルにあいながらも、南の大陸にあるポロという土地を目指す。
そこには二千二百年前に不時着した宇宙船から運びだされた膨大な書物が保管されていた。
ラゴスの目的は、その本を読破し、北にある生まれ故郷に英知をもたらそうとするものだった。
ポロで王の地位まで登りつめるもラゴスは生まれ故郷を目指し旅を再開する。
そして、なんとか生まれ故郷へ帰り、その地に様々な知恵をもたらし国を富ませることに尽力するが、ラゴスの旅はまだ、終わっていなかった…。

なんといっても、世界観がいい。
本作の世界は電気やエンジンといった文明の利器がまだ発達していない牧歌的なものだ。
そうした世界で、集団転移(集団での瞬間移動)や壁抜けといったSF的な小道具がちりばめられる。
アニメーションとの親和性は高いと思うのだけれど、どこかでアニメ化しないのだろうか?

筒井康隆を読むのは何年ぶりだったろう?
「本読みが選ぶ」といったような、どこかの書評サイトで評価が高かったので手に取ってみた。
高校生の頃は、ずいぶんたくさん読んだ記憶がある。
『七瀬ふたたび』の三部作や『農協月へ行く』とか、etc。
おれという、一人称の文字が目に入った時、ああ、筒井康隆なんだなと、懐かしさがこみあげてきた。
本作には旅が詰まっている。

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