『ダ・フォース』ドン・ウィンズロウ - 書籍レビュー
ドン・ウィンズロウ『ダ・フォース』
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ドン・ウィンズロウの『ダ・フォース』である。
翻訳は、『ザ・ボーダー』と同じ田口俊樹。
ウィンズロウには『犬の力』、『ザ・カルテル』、『ザ・ボーダー』という壮大な三部作の傑作があるが、本作もそれに負けず劣らぬ傑作である。
本作で描かれているのはニューヨークという街であり、ニューヨーク市警の警官の生活であり、一人の刑事の生き様だ。
熱く硬質で重厚な警官小説である。
期待を裏切らないレベルの高さ。
やっぱり、ウィンズロウはスゴイ!

主人公のデニス・マローンはニューヨーク市警マンハッタン・ノース特捜部、通称「ダ・フォース」を率いる部長刑事。
アイルランド系で父親も警官という、アメリカの警官の典型ともいえる血筋だ。
彼には別居中の妻と二人の子ども、そして、黒人の恋人、クローデットがいる。
マローンの特捜チームに所属するのはイタリア系のルッソと黒人のビッグ・モンティ、若手のアイルランド人のビッグ・オー。
彼らは担当する地区の市民の安全を守る一方で、長年の悪弊から裏社会からの接待や賄賂を受け取るといった利益供与を日常的に行っていた。
プールされた金はメンバー達の年金であり生活費であり上司に上納するためのモノとなる。

2016年夏、マローンのチームはドミニカ系麻薬組織の工場を急襲、チームの仲間ビリー・オーを失うが、親玉のディエゴ・ぺーナを殺害。
工場にあった100キロものヘロインを押収したが、チームはその半分の50キロをひそかに横取りしてしまう。
この手入れでマローンはNY市警史上最大の麻薬組織の手入れだと名を上げる。
この年のクリスマス・イブ、9.11の事件以降テロ対策に力を入れていたため麻薬対策がおざなりになっていたこともありマローン達は上司から麻薬関連の逮捕件数を上げるように指示される。
そのさなか、マローンは弁護士のピッコーネと会い犯罪者の司法取引と検事や弁護士の絡む贈収賄の取引を行う。
このことが、彼の未来を狂わせていく。
マローンはFBIや連邦検事のスパイになりチームの仲間や警察組織の不正を売らざるを得ない状況となり、葛藤と罪悪感に苛まれながらも、流されざるをえない。
しかも、マローンが知っていることが公になると警察の上司や街の有力者や政治家の不正までもが表沙汰になってしまう。
プライベートでは妻と離婚寸前の状況だったり、クローデットは麻薬に再び手を出したりとマローンはトラブルのドツボにはまっているといった状況だ。

これまでも、悪徳警官や警官の不正を描いた小説はあったが本作は描き方が深い。
主人公は決して正義の信奉者ではない。
一方で、自分が守るべき正義や信念には絶対的に忠実である。
そのあたりの、葛藤や心の軋みが本書の読ませどころなのだと思う。
スケールは小さいが日本の警察でも同じような話があったような気がするが、NYPDの連中はこれを読んで、どんな風に思ったのだろう。
エンディングではマローンはキッチリと落とし前をつける。
最初の章は、やや冗長な感じがするが二章まで行けば、ページを手繰る手が止まらなくなる。
読み応え十分の傑作である。

ちなみに、本作は映画化が決定したそうだ。
製作はリドリー・​スコット、監督はジェームズ・マンゴールド、そして主演はマット・デイモンだとか。

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