黒川博行の『泥濘(ぬかるみ)』です。
建設コンサルタントの二宮とやくざの桑原コンビが活躍? するバディもののミステリー「疫病神シリーズ」の第7弾。
久しぶりに読む黒川作品です。
主人公の二宮は建設コンサルタント。
その相方、桑原は二蝶会というヤクザの組の若頭補佐。
二人の漫才のような丁々発止の掛け合いは相変わらず面白い。
今回もヤクザ業界のテクニカルタームがたくさん登場し、なかなか勉強になる。
毎回、経済ヤクザの桑原が金儲けのネタを拾ってきては、二宮と一緒に大金をせしめようと奮闘するが、今回のシノギの発端となったのは警察官OBが作る自称・親睦団体の「警慈会」とヤクザの「白姚会」が行っていた診療報酬詐欺。
桑原たちが警慈会と白姚会が悪だくみを行って得た大金をかすめ取ろうと、診療報酬詐欺を探っていくと、その先にはもっと大きな金儲けのネタがあった。
老人ホーム乗っ取りにオレオレ詐欺……。
老人を食い物にする腐り切った警察OBたちに二人は挑むが、二宮は拉致、桑原は銃撃を受け心肺停止になってしまう。
桑原が撃たれてから、物語は急転直下。
このあたり桑原が撃たれる前と後では話の進み方のバランスが、あまりよくない感じがする。
桑原や二宮もいわゆる、反社会的勢力なのだが、どうも憎めない。
というのも、二人が標的にするのはまっとうな人間ではない、悪い奴らであり、そうした、悪い奴から金をせしめようとするのが痛快なのだ。
やられる側が、悪い奴というところがイイ。
黒川作品は実際にあった事件を物語のモチーフにすることが多いが本作のモデルになったのは、おそらく2016年に大阪であった歯科医院の診療報酬搾取。
本作、同様、大阪府警のOB集団が歯科医院を乗って詐欺を働いたという。
試しに「歯科医院 診療報酬詐欺 大阪府警」でググってみてください。
いやー、やっぱり、大阪!
なんて、言ったら大阪の人に怒られそうだ。
記事などを読むと、まんま、小説に使えそうな事件である。
事実は小説より奇なるのですねぇ。