『盤上の向日葵』柚月裕子
柚月裕子『盤上の向日葵』
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柚月裕子の『盤上の向日葵(ひまわり)』です。
昨今の将棋ブームを予言するかのように描かれた将棋をモチーフとしたミステリー。
読みごたえがありました。

平成6年の夏、白骨化した遺体が埼玉の大宮市郊外の小高い山中から発見される。
遺体の側からは初代菊水月という駒師が作ったとされる将棋駒の名品が見つかる。
なぜ遺体の傍らに最高級の将棋駒があったのか?
手掛かりの将棋駒を追う、ベテランの石破と若い佐野という二人の刑事。
偶然にも佐野は将棋のプロを目指し奨励会に入っていたという経歴を持っていた。
一方、主人公の上条桂介は竜昇戦(竜王戦をイメージしていると思われる)のタイトルを争うトップ棋士。
桂介は東大を卒業した後、IT企業を立ちあげ成功するが、あっさりと実業界から足を洗い将棋界に飛び込んでプロ棋士になったという異色の経歴を持つ。
物語は二人の刑事の足取りと桂介の生い立ちという二つの流れで構成される。

本作はミステリーではあるのですが「犯人探し」に主眼を置いたものではありません。
最初から犯人(と、言っていいのかな?)は誰かわかっています。
刑事たちの事件の手掛かりとなる将棋の駒を追う足取りと主人公が事件にかかわるまでの経緯がドラマティックに描かれます。

作中では将棋の試合のシーンも多く、4三歩打や4二飛成といった具合に棋譜を交えて細かく描かれ、著者は将棋のことを、よほど、勉強したのだろうなと思わせる。
自分は将棋のことは、ほとんど知らないし棋譜の部分はちゃんと追うという気にもなりませんでしたが、ただ、手に汗を握るようなじりじりとした熱気は伝わりました。
そうした部分でも作品に緊張感を与えています。

以前に読んだ『孤狼の血』という作品もそうでしたが、所々で荒々しいヤクザな言葉も使われます。
にもかかわらず、優等生が書いたようなスクエアなミステリーという印象。
物語は二人の刑事が主人公に任意同行を求めるところでおわりますが、事件は最終的にどういう結末を終えるのでしょう?
遺体が見つかった顛末を裁判で証明するのは、なかなか難しいのではないだろうかと思う訳です。
主人公はなぜ、遺体を埋めてしまったのか? なぜ、すぐに救急車や警察を呼ばなかったのか?
読んでいて横溝正史の作品によくある、一族を巡る血の物語や松本清張の『砂の器』がちょっと、頭をよぎりました。

ずっと、読みたいと思っていた作品ですが、人気作品のせいか図書館ではずっと貸し出し中で、なかなか借りることができませんでした。
一昨日、たまたま出かけた町内の図書館で偶然見つけて即、借りました。
で、さっそく読み始めた次第です。

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