原尞(りょう)の『それまでの明日』を読む
原尞(りょう)の『それまでの明日』を読む
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原尞(りょう)の『それまでの明日』である。
14年ぶりの新刊だという。
書店で本書を見たときには「おやおや、原尞が新刊を出したんだ!」と。
懐かしいと同時に、あの文体がまた読めるのかと、つい衝動買いしてしまった。

自宅に帰り、さっそく読み始めたが…。
最初の数ページを読み「おいおい、今どきスマホどころか携帯電話すら持たない探偵なんているのか」と、そこに、引っかかって結果、そのまま積読となってしまった。
…で、昨年の暮れに本書が、「ミステリが読みたい!2019年版」(早川書房)と「このミステリーがすごい!2019年版」(宝島社)の国内編ランキングで1位になったことを知るわけである。
そうか、そんなによい作品なら「やっぱり、読まねばならんだろう」と、遅まきながら、あらためて読み直してみた。

主人公の沢崎は新宿に事務所を構える、五十歳を超えた探偵だ。
物語は彼が新宿の消費者金融の支店長から六本木の料亭の女将の調査を依頼されるところから始まる。
調べてみると調査対象の女将は亡くなっていることが判明する。
そのことを伝えるべく沢崎は依頼人に会うために勤務先の消費者金融の店舗へ出向くと、そこで不可解な強盗事件が発生する。

ストーリー自体、あまりひねらずに、直球勝負といったような流れで持って行ったほうがよかったのではないかと思った。
途中まで、いい流れで読めるところもあったのだが、それが、最後まで続かなかった。
自分にとっては、梅木という青年を登場させたことが、靴の中の小石のように読み進めるうえでの居心地を悪くさせた。
「なんか、違うんじゃないか」と。
それでも、新宿署の刑事やヤクザの幹部、そうした登場人物たちと主人公の会話が小気味よい。
主人公のシニカルぶりは健在だ。

それにしても、なんとタバコを吸うシーンの多いことか。
東京でタバコを吸える場所が、まだ、そんなにあったのか。
気になるといえば、旧作で乗っていたブルーバードは修理屋が引き取ったようだが、本作で登場した愛車は何だったのだろう。
まさか、プリウスってことはないと思うが…。

自分としては、もう一つといったところ。
思えば、デビュー作の『そして夜は甦る』と直木賞を受賞した第二作『私が殺した少女』の出来がよすぎたのかもしれない。

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