柚月裕子『慈雨』
柚月裕子『慈雨』
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柚月裕子の『慈雨』を読む。
しばらく、積読になっていたので早く読まないとなぁと思いながらも、読んだのは今日に、なってしまった。

舞台は群馬県。
森村誠一の『人間の証明』や横山秀夫『64(ロクヨン)』(D県警と謳っているが)もそうだったが、群馬県はよくミステリーの舞台になるねぇ。

主人公は群馬県警を定年退職した元刑事の神場。
交番勤務から静かな山村で駐在を勤め、ある事件の解決をきっかけに刑事となり、そして定年を迎えた叩き上げの元警官だ。
彼は定年を迎えると、妻の佳代子とともに徒歩で回る四国八十八箇所の巡礼の旅に出た。
すると間もなく、群馬県内で幼い女児の誘拐殺人事件が発生したことを知る。
神場は、十六年前に手掛けた女児の誘拐殺害事件との関連、そして、それにまつわる疑念が頭から離れないのだった。
彼は巡礼の旅をつづけながらも、昔の部下や上司に電話で自分の推理をサジェストし、事件の解決に尽くそうとする。
しかし、事件を解決するには、十六年前に手掛けた女児の誘拐殺害事件に関連する大きな問題があった…。

読んでいるうちに、ジェフリー・ディーヴァーの描くミステリー、リンカーン・ライム・シリーズを思い出してしまった。
リンカーン・ライムは四肢を麻痺し寝たきりだが、自分の推理を駆使して現場のスタッフを動かし事件を解決していく。
本作も主人公は事件現場に現れることもなく、電話で元部下や元の同僚に解決の糸口になる手がかりを与え、事件解決の方向をアシストする。

本作の前に発表された『孤狼の血』と比べると、こちらのほうが文章も滑らかで、丁寧に描かれている印象。
作者は釜石市生まれの山形市在住なので、四国や群馬の土地勘はないと思うのだが、ここまでリアルに描けるというのは取材をしっかりと行ったのだろう。
ハードボイルドとしては、登場人物たちの心情を書き込みすぎていて、お涙頂戴といった意図が見え透いてしまうのが少しばかり気にはなる。
このあたり、泣けるようなものをと作者も意図しているとは思うのだが…。
まぁ、それでも、読む人をたらしこむうまさがある。

『孤狼の血』も悪くはないが、自分は本作のほうが好きだなぁ。

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