若杉冽『原発ホワイトアウト』
若杉冽『原発ホワイトアウト』
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若杉冽の『原発ホワイトアウト』である。
現役の官僚が書いたことで話題の小説。
登場する一部の人物には実在のモデルがいると言われ、発売当初、霞ヶ関では、そのリアルさから作者がだれか犯人探しが始まったとか…。
おそらく著者がこの小説を通じてアピールしたいのは、電力会社が日本という国のシステムに、どのように関与しコントロールしているかを世間に知らしめるところにあるのだろう。

ゆえに小説の形を借りた、電力会社と政治家、そして官僚の癒着の告発書としても読むことができる。
この小説のハイライトは、電力会社が行っている政治家を取り込むための手法やシステムを細かく描いているところだ。
本書でモンスターシステムと言われている、このシステムを要約するとこんな感じになる。

電力会社は地域独占が認められている代わりに政府の料金規制を受けているが、その料金規制の内容は、事業にかかる経費に一定の報酬率を乗じた額を消費者から回収できる。
ただ、事業にかかる経費自体、政府によって非常に甘く査定されているし、経費が大きければ大きいほど儲けが増えるため、電力会社は、より多くの経費を使いたがる。
したがって、電力会社から発注される資材の調達、燃料の購入、工事の発注、検針・集金業務の委託、施設の整備や清掃業務等は、世間の相場と比較して、二割程度割高になっている。
そのため、取引先や下請け企業にとっては、電力会社は二割増しの単価で仕事をくれる上お得意様である。
電力会社は、この超過利潤の二割から、一割五分を発注先の取り分として、残り五分を電力会社を頂点とする取引先の繁栄を維持するための預託金としてプールされ、さらに、取引先のうち気心のしれた企業を協力会社会という任意団体として組織化し、各社受注額の約4パーセント程度を預託する。
政治家のパーティー券の購入や原発に好意的な学者への寄付、マスコミ対策の費用などは、この預託金から支出される。
任意団体の会員企業には政治家のパ-ティー券などの領収書が送り付けられるが、各社ごとにみれば、政治資金法による収支報告書への記載下限額未満であるから、名前は一切、表にでない。
法律上は違法性がなく電力会社の名前が表に出ることもない。
という、ことのようらしい…。

ちなみに、こうしたことは東京電力のみならず、すべての電力会社で行われているようだ。
正直、小説のできとしては、もう一つの感があるが、電力会社と政治家、そして官僚の間の暗い関係や原子力発電所にたいする電力会社や国の考え方を知っただけでもよかったと思える。
我々、国民はこうした実態を正確に知る必要があるし、唯一、普通の庶民が国の方針に介入できる場は選挙しかないことを肝に銘じる必要がある。

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