和田竜の『のぼうの城』である。
帯の「今年のナンバー1」というコピーにそそられて読んでみたが、もうひとつ作品に奥行きが感じられない。
面白くないこともないが、小説的には、もう一つこなれていない感じ。
ただ戦国時代、地方の小さな城を舞台にこうしたドラマチックな戦いが実際にあったことを知る勉強になったのはよかった。
物語は武州にある忍城(おしじょう)をめぐる城代成田長親と石田三成との攻防戦である。
武州とは現在の埼玉県行田市あたりのこと。
相模の北条氏と豊臣秀吉との小田原合戦に際し、北条側についた忍城を攻略するよう三成は命ぜられる。
二万の軍勢で攻める石田勢に対して300名ほどで籠城する成田勢。
城を守る成田勢の家老たちの働きで、なかなか城を落とすことができない三成は堤を七里(約28キロ)ほど築き利根川を利用した水攻めを行う。
しかし、水が満ちた状態のときに堤がきられ、逆に三成勢に被害を与えてまう。
こうして北条方が降伏する最後まで忍城は落ちることは無かった。
ちなみに小説に登場する甲斐姫という成田のお姫様は実在する人物で、自ら甲冑を身に着けて出陣するような、なかなか勇ましい方だったらしい。
後年、が豊臣秀吉の側室の一人となったとか、波乱万丈な人生を生きたお姫様だったようである。
この甲斐姫を主人公に小説を書いたほうが、面白いものになったのではないだろうか。