トム・ロブ・スミス『チャイルド44』
トム・ロブ・スミス『チャイルド44』
スポンサーリンク

トム・ロブ・スミスの『チャイルド44』である。
本の帯には「このミステリーがすごい!」2009年版海外編第1位。
2008年度CWAスティール・ダガー受賞、ブッカー賞ノミネートとある。
これは、是非とも読まねばなるまい。

この小説は1978年から1990年にかけてロシアで実際にあったチカチーロ事件という52人を殺害した猟奇殺害事件をモデルに書かれている。

主人公は国家保安省というソ連の秘密警察の捜査官。
舞台はスターリンからフルシチョフに変わる頃のソ連。
モスクワで幼い少年の惨殺死体が発見された。
主人公はこの件を犯罪ではなく事故として処理する。
敵対する部下の謀略にはまり、主人公は田舎の警察に左遷されてしまう。
その田舎で発見された少女の惨殺死体。
この事件をきかっけに、広範な地域で44件の少年や少女が同様の手口で惨殺された情報を得る。
そして、それは主人公が事故と処理した少年の殺害と同様の手口だった……。

何もしないことが最良の選択である社会は恐ろしい

この小説には二つの大きなポイントがある。
一つは舞台がスターリン体制下のソ連という点。
当時、ソ連には「(西側とは違う共産主義体制の平等で幸福な)この社会に犯罪は存在するはずがない」という国家の大きな方針があった。
つまり、殺人があり、それを捜査するということは国家の方針に矛盾があることを証明してしまうのだ。
そうした国家の硬直した建前主義が事件の捜査を進める大きな障害となった。
国家と個人の間に横たわる大きな矛盾を意識しながら主人公夫婦は捜査を進める。
人が人を疑うことが当たり前の社会。
何もしないことが最良の選択である社会のなんと恐ろしいことよ。

もう一つのポイントは主人公と、妻との関係である。
夫が国家保安省の捜査官だった頃は、それなりに特権的な生活を送ることができたが夫の職業から本当の信頼は二人の間になかった。
夫が田舎の警察に左遷され苦しい生活を強いられ、さまざまな困難にあいながら、このおぞましい事件を調査していくうちにお互いの信頼を回復していく。
この妻の生き方が描かれているためにこの小説は、男のためのものだけにはなっていない。

この小説はリドリー・スコットで映画になることが決まったそうである。
主人公役は、あまり思いつかないが奥さん役はレイチェル・ワイズあたりが似合うような気がする。
ちなみにこの小説、ロシアでは発禁になっているのだとか……。

スポンサーリンク
おすすめの記事