森見登美彦『有頂天家族』
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森見登美彦の『有頂天家族』です。
レトロでポップでリズミカル、そしてユーモアたっぷりなんだけど妙に格調の高さを感じさせる文体。
それに花を添えるのが大正ロマンを髣髴とさせる電気ブランや赤玉ポートワインといった小道具。
彼の小説には裸電球がよく似合う。
舞台となる京都の街ですら薄暗い闇の中で裸電球に照らされているよう。

物語は主人公の下鴨一族といわれる狸の一家の三男、矢三郎を中心に展開する。
天狗の赤玉先生や半人間半天狗の美女、弁天との関係。
夷川(えびすがわ)一族といわれる狸一族との確執。
秘密結社の金曜倶楽部との活劇。
そうした、超個性的な登場人物たちとのやりとりのなかで、常に真ん中にあるのが父と母そして四人兄弟の濃密すぎる家族の関係である。

物語自体は荒唐無稽で、冷めた目で見れば「だからどうしたの?」といったもの。
しかし、ファンタジーといいつつ、物語に登場する京都の実在する場所が、妙なリアリティと親近感を与えている。
街全体がパワースポットといえる京都という土地なくして、この作品はあり得ないかもしれない。
ダイナミックでスピード感のある展開はデビュー作の『太陽の塔』以来のモリミー節全開でぐいぐい読ませる。
こうした家族離散の時代に、この濃密な家族のあり方は少しばかりうらやましくもある。

著者の森見登美彦は京都大学農学部に在学中に書いた『太陽の塔』で作家デビュー。
京都という街に浸りたいなら同じ京都大学出身の万城目学の描く青春小説とともにおススメです。

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