石黒耀の『震災列島』である。
駿河湾沖を震源とする東南海地震を大掛かりな仕掛けとしたクライシス冒険活劇。
先日、読んだ『死都日本』が、ものすごくインパクトがあったので、その流れで読む石黒耀の作品。
ストーリーは名古屋で地質調査業を生業とする主人公が東海・南海地震を利用して、自分の娘の命を奪う原因となったヤクザと対決して仇をとるという、一言でいってしまうと身も蓋もないが、こうしたストーリーに説得力をもたせてしまう作家の力量には敬服する。
『死都日本』を描いた作家だけあって東海地震が発生するシステムや起こったときの状況などは緻密でリアリティもあり迫力十分である。
一方、主人公が敵であるヤクザと対決する計画など、やや荒唐無稽の感じがしないわけでもないがエンターテイメントとしては面白く読めた。
全体に人物の描き方が浅い印象を受ける。
主人公の娘は敵となるヤクザが原因で自殺してしまうのだが、そうした状況にもかかわらず主人公からはあまり深刻な心境が伝わらない。
文章も軽く全体として会話に名古屋弁が使われるなど軽妙な感じを受けるせいもあるかもしれない。
小説の中で登場人物に語らせている静岡県御前崎にある浜岡原発の耐震性に問題がある点(かなり基準が甘いらしい…)など、作者の社会批判がアクセントになっている。
個人的には前作の『死都日本』のほうがオススメ。