『生物と無生物のあいだ』福岡伸一
福岡伸一『生物と無生物のあいだ』
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福岡伸一の『生物と無生物のあいだ』である。
サントリー学芸賞受賞作。

遠浅の海辺。砂丘が穏やかな弓形に広がる。海を渡ってくる風が強い。空が海に溶け、海が陸地に接する場所には、生命の謎を解く何らかの破片が散逸しているような気がする。だから私たちの夢想もしばしばここからたゆたい、ここへ還る。

以上の文章は、まるで散文詩のように美しいが、この本のとある章の冒頭だ。
タイトルを見ると面白くもなんともない無機質な感じがするが、さにあらずである。
「たゆたい」なんて表現、普通、この手の理系の本でお目にかかるなんてことはないよ。
いや、ホントに!
タイトルは「生物と無生物のあいだ」というタイトルだが、別の側面から見れば「サイエンスと文学のあいだ」といってもよいような本である。
とてもレベルの高い科学的なことや技術的なことが、上手に説明してあるので私のようなシロウトにもとても読みやすく分かりやすく書いてある。
もちろん、100%理解したとはいいがたいが…。

サイエンスの素人にとって、この本一冊を読むことによって得る発見はすごくたくさんある。
それはDNAのことであったり、その複製方法や、細胞膜のことであったり、生物とはなにかであったり、etc…。
知ってました? たとえば、人間の体は分子レベルでは半年から1年程度ですっかり入れ替わっているって。

純粋に科学的なことを、事務的な表現で描かれた内容だったら3ページも読み通すことができないかもしれない。
しかし、この本で描かれている中心にあるのは人間たちだ。
DNAの二重らせん構造を発見する人間たちのドラマや、実験を行う当事者である著者の思惑などか科学的な事象とともにバランスよく描かれている。
だから、とても魅力的な読み物になったのだと思う。

NHKの番組に「爆笑問題のニッポンの教養」という番組がある。
そこに著者の福岡伸一が登場している回をたまたま観ることがあった。
正直、さえないオッサン(人のことを言える立場にない)なんだけど、発言とか聞くとやっぱりちょっと違うなと思わせる何かがあります。

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