スティーヴン・キング『アンダー・ザ・ドーム』
スティーヴン・キング『アンダー・ザ・ドーム』
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アメリカを代表する人気ベストセラー作家、スティーヴン・キングの『アンダー・ザ・ドーム』である。
アメリカでテレビドラマになったこともあり、以前から興味はあったのだが上下巻で1400ページ(しかも上下2段の段組み)を超えるヴォリュームに気後れして手が出せずにいた。
しかし年末年始の休みが近いこともあり、この機会に読んでみようと近所の図書館から借りてきたのはいいのだが、この休暇のほとんどをこの物語に費やしてしまった。
この時間、労力と小説から得たものを天秤にかけると、果たして自分にとって有意義な読書だったのか、正直、疑問なところだ。

たくさんの登場人物、そして濃密かつ微に入り細を穿つような文章。
小説は長ければよいというものでもないし、事象や人物、デテールを細かく描けばよいというものでもない。
ところどこに挟み込まれるアメリカらしいギャグやキングの愛読者にはなじみのある固有名詞、そしてマニアウケする言い回し。
このあたりサービス精神も十分だしキングの圧倒的な筆力を知るには、なかなかよいテキストかもしれない。
ただし、自分が担当の編集者なら「先生、もっと削りましょうよ」と言ってしまうところだ。
まぁ、とにかく読むのに疲れた。

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物語の舞台はアメリカの東海岸北部、メイン州にある人口2000人ほどのチェスターズミルという架空の町。
この町全体が突如として巨大で堅牢かつ透明で薄いドームに覆われる。
ドームの外の人々は、中の人間を解放しようとバンカーバスターといわれるミサイルや強力な酸性の化学薬品などで何とかドームに穴を開けようとするがビクともしない。
こうしたシチュエーションからすればSF小説と言えるのかもしれないが、物語はSF的なシチュエーションから人間ドラマに焦点がスライドしていく。

描かれるのは閉鎖された世界での群集心理。
住民のためにという大義名分の下で権力の集中と警察力の強化を図ろうとする町の実力者、そして、それに抵抗する一部の自由と人権を守ろうとする人々。
作中で最も存在感を発揮したのは邪悪な町の実力者ビッグ・ジム・レイニーだ。
彼は町の第二町政委員であり、中古自動車販売店を経営している。
これは表の顔で、その裏では覚せい剤の製造販売を仕切っている。
口癖は「綿摘み野郎」。
これだけでも、どんな人物か想像できると言うものだ。

ドームの中で巻き起こる暴力や殺人の連鎖。
R-18を越えるようなきわどいシーンも多いが、閉鎖された世界がじりじりと人々の狂気に満たされていく過程の描写はキングの面目躍如。
終盤に起こるクライシス。
絶体絶命の善良なる人々。
そしてエピローグで明かされるドームの謎。
しかし、これが「えッ、そういうことだったの…」という感じで、どうしてもモヤモヤした感じが残る。
こういう人知の及ばないところは、神に似たような存在が登場するのだね…。
面白いと言えば、面白いのだが、疲れると言えば疲れる。
そんな作品かな。

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