和田竜『村上海賊の娘』
和田竜『村上海賊の娘』
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和田竜の『村上海賊の娘』である。
第11回本屋大賞、第35回吉川英治文学新人賞受賞作。
上下巻、各々500ページ近いなかなかのヴォリューム。
おかげで、お盆休みのかなりの時間をつぎ込んでしまった。

織田信長が門徒宗といわれる浄土真宗本願寺勢力の隆盛を恐れ、その総本山である石山本願寺を攻略した石山合戦において本願寺側の村上水軍(毛利軍)と織田側とが大阪湾で戦った第一次木津川口の合戦を描いた歴史小説。

石山合戦は最終的には信長が勝利し、石山本願寺は信長に引き渡した後、出火し焼失している。
現在の大阪城のある場所が石山本願寺があった場所とされている。
ちなみに、本願寺が現在の東本願寺(浄土真宗大谷派)と西本願寺(浄土真宗本願寺派)に分裂した原因は石山合戦の終盤における主戦派と講和派の対立にある。
浄土真宗の教えは「南無阿弥陀仏」と唱えれば、誰もが極楽浄土へ行くことできるというものだから、信者は死ぬことを恐れることがない。
権力者の織田側からしたら、そうした者達が反体制側にいたら、将来禍根を残すと思うのもわからなくはない。

本作だが、まず来島村上氏の姫が戦場で活躍するという設定が面白い(史実なのだろうか?)。
主人公はもちろんだが、脇役で登場する織田側の真鍋七五三兵衛、主人公の弟の村上景親などキャラクターが個性的で映画化を念頭においたのだろうかと思わせるぐらいキャラが立っている。

主人公のヒロインが登場するや、彼女をいきなり醜女(しこめ)と書いているのにはビックリしたが、日に焼けた肌で彫りの深いラテン系のハーフのような容姿だとしているあたり、現代のわれわれの眼から見たら美人に違いないだろう。
補足するなら信長の時代は色白で長い黒髪とおちょぼ口、一重まぶたで切れ長の目の女性が美人の条件とされていたので、日に焼けた肌のヒロインは当時の基準からしたら、とても美人とはいえなかった。

歴史小説を読み込んでいる読者なら、この表現は歴史小説の大家、○○○○と一緒だなといった感じで、いくつかの言い回しなどで古い歴史小説家の影響が感じられる。
全体的には、現代の歴史小説らしい軽やかさとハリウッド映画的な迫力は感じられるが、小説としての妙味はもうひとつ。
ハイライトは下巻の多くのページを占める木津川河口での海戦シーン。

東北の内陸に住んでいると、なかなか身近には感じられない海賊だが、それでも村上水軍が戦国時代最強と言われる水軍だということぐらいは知っている。
昨年、瀬戸大橋をクルマで渡り神戸から淡路島、愛媛の松山へと旅をした。
瀬戸大橋を渡る途中、青空の下、迫力ある渦潮の脇をいくつもの観光船や貨物船が行きかう光景が見えた。
その時の、風景を思い出しながらページをめくった。

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