黒川博行の『螻蛄(けら)』である。
先月読んだ『破門』が面白かったのがきっかけで、最近は黒川博行づいている。
今回の作品も、安定した面白さ。
『破門』同様、疫病神シリーズといわれる作品で、これは第4弾になる。
シリーズにはなっているが、この作品も一冊で完結の内容になっているので前作を読んでなくても問題なく読める。
自称建設コンサルタントの二宮と、二宮から疫病神と煙たがられる経済ヤクザの桑原が今回も活躍?
なにより、二人の漫才のような会話が面白い。
今回のシノギは、京都の伝統仏教の本山にまつわる寺宝に目をつけ、桑原がその権力争いに乗じて大金をせしめようとするもの。
しかし、そう物事はとんとん拍子に運ばない。
京都の本山から独立しようとする東京の別院、それに絡む東京のやくざ。
このあたり、京都の大きなお寺さんあたりは、相当、お金を持っているんだろうなと思わせる。
事実、もっているのだろうが…。
庶民としては、こうしたお金のたくさん集まるお寺さんからは税金を徴収してほしいものだ。
参考資料には『東本願寺三十年紛争』というタイトルも見えたが、真宗大谷派あたりもモデルになっているのだろうか?
うちも、お寺は真宗大谷派なんですけど…。
悪いやつばかりが登場する小説だが、イケイケのやくざとヘタレな主人公が、自分たちより悪い奴らをはめようと画策するのは、なかなか痛快。