黒川博行『離れ折紙』
黒川博行『離れ折紙』
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黒川博行の『離れ折紙』である。
先月読んだ『破門』という小説が面白かったので、つい、また同じ著者の小説を読んでしまった。

今回のは、人間の欲望渦巻く美術界を舞台にした6編の短編集。
各々の短編はアールヌーヴォーの工芸から、日本刀、浮世絵、日本画など話の中心となる美術品は異なるが、登場人物や舞台が一部重なっているところがあるせいか連作といった趣もある。
美術館や画廊、キュレーター、美大の先生、ハタ師、店師そうした美術品で稼いでいる人たちの内幕を赤裸々に描いている。
売りたい人と買いたい人の駆け引き、贋作と真作が何ともあいまいだったり、儲けたいがために生じる、なんとも生臭い話ばかりである。

多少、美術に興味のある人間や、テレビ東京の「なんでも鑑定団」のファンなら面白く読める。
普段、美術品を見るときは、業界のバックヤードまでは想像しないが、この小説のおかげで、美術品をこれまでとは違った角度から観てしまいそうである。

美術に関するの薀蓄もたくさん描かれているあたりは、京都市立芸術大学美術学部彫刻科を卒業した著者の真骨頂。
装丁の画は作者の奥さんである日本画家の黒川雅子の作。

「折紙付き」とは…

なおタイトルにもなっている「離れ折紙」の「折紙」とは江戸時代の美術品や刀剣などの鑑定書のこと。
物品とセットになっていない鑑定書だけのことを「離れ折紙」という。
「離れ折紙」があれば、それに合ったような偽物を探して売りつけるという詐欺まがいの骨董商もいるらしい。

ちなみに、「折紙」の付いている美術品や刀剣は信用できることことから「あの人の技術は折紙付き」などと言ったりする実力や品質を保証する「折紙付き」の語源にもなっている。
蛇足ながら「折紙付き」は良い意味でしか使わない。
悪い評判の場合は「札付き」を使うのだそうだ…。

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