佐々木譲の『うたう警官』です。
以前、読んだ同じ作家の『警察庁から来た男』の出来がよかったので、その勢いで読んでみた。
この小説を読むと昔、報道された北海道で実際にあった事件(稲葉事件)が思い出される。
この事件は北海道警察のエースといわれた元警部が拳銃摘発の協力者に渡すべき謝礼を捻出するため、覚せい剤や拳銃の密売を行った事件で背景には北海道警幹部たちの裏金作りがあったとされている。
本来、捜査協力者に渡す謝礼などは捜査員が使える報償費や捜査費を当てるわけだが、その金を北海道警幹部たちが捜査員に渡さず自分のポケットマネーにしていたらしい。
この稲葉事件を物語の背景となるモデルとしているのは明らかだし、リアルな警察の一面を知るにはよい一冊だと思う。
少しばかり仕掛けが大げさでやや現実味に欠ける面もあるが、分かりやすい文体とスピード感のあるストーリーで面白く読むことができた。
こうしたハードボイルドタッチの物語にジャズが小道具として使われるのはステレオタイプな感じがして少しばかり残念。
個人的には本作の次の作品『警察庁から来た男』の方が抑制された感じがありオススメ。