加藤廣の『信長の棺』である。
織田信長の伝記『信長公記(しんちょうこうき)』の作者、太田牛一を主人公にした作品。
牛一は織田信長に使えた実在の人物。
信長の死後、豊臣秀吉に仕え八十代半ばまで長生きしたという。
『信長公記』は正確性と緻密さから歴史学者の信長研究には欠かせない資料となっているらしい。
物語は牛一が「信長の遺骸がどこに消えたか」というミステリーを解き明かしていくことを軸に展開。
「どうも、釈然としない」というところが正直な読後感である。
信長が暦にこだわって安土城を築城し、天皇を迎えようとしたという設定にも、少々、無理を感じる。
帯には小泉首相も感銘を受けたとあるが、どこに感銘を受けたの? という感じである。
まぁ、それでもエンターテイメントとしては面白く読むことができたし、安土桃山という時代を知るという観点からは勉強になった。