砂原浩太朗の『高瀬庄左衛門御留書(たかせしょうざえもんおとどめがき)』です。 読み始めから中盤まで行ったあたりで「これは、もう、完璧に藤沢周平の系譜を継ぐ時代小説」だなと。 頭に浮かんだのは『三屋清左衛門残日録』。 タイトルからして似ています。 おそらく、想像ですが作者は敢えて藤沢作品に寄せたのではないでしょうか。 読...
歴史・時代小説の記事一覧
藤沢周平の傑作、『用心棒日月抄』である。 お盆の休日、本当は違う小説を読んでいたのだが、目に留まった本書をパラパラ捲っていたらやめられなくなってしまった。 数年ぶりではあるが、これで、三度目の再読である。 案の定、こうなることは分かっていた。 自分にとっては池波正太郎の『剣客商売』に並ぶかっぱえびせん本である。 主人公...
城山三郎の『雄気堂々』です。 今年のNHK大河ドラマ『青天を衝け』の主人公、渋沢栄一を描いた歴史小説。 令和6年に発行予定の新一万円札の肖像にも選ばれた実業家です。 渋沢栄一の名前を初めて知ったのは、三十年ぐらい前に読んだ荒俣宏の『帝都物語』だったと思います。 確か関東大震災後の帝都、東京を設計し復興させた人物として登...
だいぶ昔に読んだ作品だが、飯嶋和一の『黄金旅風』である。 図書館で借りて読んだ本を、改めて購入した本というのは、それほど多くないのだが本作は「この本はちゃんと買って、持っていた方がいいな」と思い、改めて本屋さんで購入した。 そのぐらい、本作を読み終えたときは「いい小説だな」と思った。 以来、信者とまではいかないが飯島和...
山本周五郎の『樅ノ木(もみのき)は残った』です。 この年齢になるまで、本作を読んでいなかったというのは不覚でした。 こんな、すごい小説を見逃していたのかと…。 微に入り細を穿つような人物模写。 一編の小説ではあるが、伊達藩の殿様、藩士から浪人、山中に住む猟師、そして、様々な階層の女たちが登場して一つのストーリーを軸とし...
藤沢周平の『よろずや平四郎活人剣』です。 十数年前に読んで以来、本作を読むのは二度目。 ずーっと、また読みたいなぁと思っていた。 連作の短編集で結構、長い作品だが今回も面白く読むことができた。 娯楽時代劇という言葉がこれほどピッタリな小説はないのではなかろうか。 まず、詩情がありユーモアがある。 そしてラブストーリーも...
万城目学の『悟浄出立』である。 久しぶりに読む万城目学の小説。 『鴨川ホルモー』や『偉大なる、しゅららぼん』といった長編の摩訶不思議な面白青春小説は読んだことはあるが、そうした系統でない、しかも短編の小説は初めて読んだ。 なんか、作者の底力を見せられた感じ。 当初は短編集だとは思わず最初の「悟浄出立」の一篇を読み終え、...
高橋義夫の『さむらい道』である。『さむらい道』と書いて「さむらいみち」と読ませる。本作は戦国時代から江戸時代初期まで、主に山形県の村山地方を治めた(後に庄内など日本海側も領地となる)出羽山形藩の初代藩主、最上義光の生涯を描いた歴史小説である...